性暴力加害者に甘いフランス映画界に抗議…『燃ゆる女の肖像』のアデル・エネルが引退を表明

#MeToo#アデル・エネル#ジェラール・ドパルデュー#フランス映画#ロマン・ポランスキー

ハリウッド・リポーターより
ハリウッド・リポーターより

「彼らは私たちが沈黙したまま死んでいくことを望んでいるのです」

『燃ゆる女の肖像』などで知られる俳優のアデル・エネルが、性暴力加害者に甘いフランス映画界への抗議を表し、引退を表明した。

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2015年に『ミリタリーな彼女』でセザール賞優秀女優賞を受賞し、フェミニスト、社会や環境問題の活動家としても知られるエネルは昨年も映画界引退を表明したが、9日(現地時間)、フランスの映画テレビ情報誌「Télérama」に自らの言葉で決断に至った思いを綴っている。

Télérama」誌はエネルの映画出演が『ディアスキン 鹿革の殺人鬼』(19年)以来、途絶えているのは彼女自身の意思によるものかを問い合わせ、エネルは書簡の形で質問に答えた。

彼女はフランス映画界に「性暴力加害者に対する事なかれ主義」「人種差別の秩序への協力」が蔓延していることを糾弾するため、「映画界からの引退を政治的に決意しました」という。

エネルは、映画界が「生物多様性の崩壊」「制御不能に陥りつつあるヨーロッパの軍国主義化」「飢餓など悲惨な状況の蔓延」に対して、あまりにも「軽い」と糾弾、さらに性的暴行や虐待の加害者や疑いのある人物に目をつぶる映画界を非難している。

「彼らは皆、多くのドパルデュー、ポランスキー、ブトナのような人々の面目を保つために手を取り合う。それ(被害者による告発)が彼らには面倒で、被害者が声を上げるのが邪魔なのです。彼らは、私たちがこのまま姿を消し、沈黙したまま死んでいくことを望んでいるのです」。

フランスの名優、ジェラール・ドパルデューは2004年から2022年まで、映画の撮影現場を中心に多くの10数名の女性に性的暴力を振るったと告発されている。

また、1970年代に13歳の子役モデルに性的暴行を働いたとされるロマン・ポランスキーが2020年に『オフィサー・アンド・スパイ』で第45回セザール賞監督賞を受賞した際、エネルは「恥を知れ」と抗議の声をあげて会場を後にした。

ブトナとはフランス国立映画センター(CNC)の現所長であるドミニク・ブトナのこと。ブトナは2021年に22歳の女性への性的暴行とレイプ未遂で起訴されたが、2022年にCNCのトップに再任されている。

「ブルジョワジーが言論と財政を独占する中で、私には自らの肉体と誠実さ以外に武器はありません。本来の意味でのキャンセル・カルチャー、つまりあなたたちはお金も権力もあらゆる栄光も全て持っている。それを享受すればいい。でも私はあなた方の観客にはならない。私はあなた方を私の世界からキャンセルします。私は去り、ストライキを行い、金と権力よりも意味と尊厳の探求を優先する同志と合流します」。

エネルは現在、振付師で演出家のジゼル・ヴィエンヌと組み、舞台芸術で活動している。また、フランス政府の年金改革に反対するデモに参加するなど、政治活動にも積極的だ。

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