【映画を聴く】『スウィート17モンスター』後編
“こじらせ&空回り系女子”になりきった演技力に舌を巻く!
ヒロインのネイディーンを演じるのは、ヘイリー・スタインフェルド。14歳の時、コーエン兄弟の2010年作品『トゥルー・グリッド』でデビュー。アカデミー賞助演女優賞にノミネートされ、一気にスターの仲間入りを果たしている。
音楽ファンならジョン・カーニー監督の『はじまりのうた』や人気ミュージカル映画の続編『ピッチ・パーフェクト2』での演技が印象深いかもしれない。前者では内気ながらギターの才能を秘めたバイオレットを、後者では作曲家志望のエミリーを演じている。
自身もアーティストとして昨年、シングル「Love Myself」でデビュー。アッパーなダンス・チューンをキレ味よく歌って踊るMVが話題となり、すでに100万ダウンロードを記録している。『ピッチ・パーフェクト2』でのエミリー役を通じて「自分はこれ(歌手)をやらなくちゃ!」と理解したそうで、デビュー曲とは思えない貫禄を見せつけている。女優と歌手を軽やかに往来できる、新世代の最注目株と言ってしまっていいだろう。
物語は終始、このネイディーンの持つささくれ立った感情に引っ張られて進むのだが、終盤のある部分で軽やかな“転調”を迎える。それはネイディーンの思春期の終わりと、大人になる準備期間の到来を告げている。“『ゴーストワールド』よりリアルで『JUNO/ジュノ』よりイタくて身に迫り、『リトル・ミス・サンシャイン』より家族愛に感動する”というキャッチコピーの通り、“青春こじらせ映画”の新定番となりそうな一本である。(文:伊藤隆剛/ライター)
『スウィート17モンスター』は4月22日より公開される。
伊藤 隆剛(いとう りゅうごう)
ライター時々エディター。出版社、広告制作会社を経て、2013年よりフリー。ボブ・ディランの饒舌さ、モータウンの品質安定ぶり、ジョージ・ハリスンの 趣味性、モーズ・アリソンの脱力加減、細野晴臣の来る者を拒まない寛容さ、大瀧詠一の大きな史観、ハーマンズ・ハーミッツの脳天気さ、アズテック・カメラ の青さ、渋谷系の節操のなさ、スチャダラパーの“それってどうなの?”的視点を糧に、音楽/映画/オーディオビジュアル/ライフスタイル/書籍にまつわる 記事を日々専門誌やウェブサイトに寄稿している。1973年生まれ。名古屋在住。
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