(…前編「“音”にシビアな押井マナーもしっかり踏襲〜」より続く)
【映画を聴く】GW後半のイチオシ映画5本/後編
高田渡のドキュメンタリーもオススメ!
●『無限の住人』(4月29日公開)
本人稼働のPR活動で連日テレビに出まくっているキムタクの、SMAP解散後初となる主演映画。“1人 VS. 300人のぶった斬りアクション”のキャッチコピーの通り、140分の大半でキムタクが斬りまくり/斬られまくり。巧妙に作り上げられた音響効果が、イタさをかさ上げする。「バーカ」や「待てよ」に代表されるキムタク語彙はここでも不変ながら、脇を固める市川海老蔵や市原隼人など敵役のハイパーなビジュアル、MIYAVIの手がける主題歌のソリッドなサウンドなどがゴッタ煮となり、“主演:木村拓哉”に付いて回る既視感を取り払っている。
・解散騒動で深手負うキムタクが見せた、本物のスターにしか使えない魔法
亡くなってもう12年が経つ、フォークシンガーの高田渡。これまでにも『タカダワタル的』『タカダワタル的ゼロ』という素晴らしいドキュメンタリーが公開されているが、本作は2005年3月27日に行なわれた東京での最後のライヴを収録。高円寺の居酒屋で30人ほどの観客を前に歌い、眠っているのではないかと思うほどゆっくりと小さな声で、それでいてサービス精神旺盛な話術を繰り広げるその様子は、タイトルの通り“まるでいつもの夜みたいに”思える。1週間後の北海道でツアー中に倒れ、4月12日に入院先の病院で亡くなるなんてまだ誰も知らない、ただただオフビートで幸せな空気が流れている。絶妙に定番を外した選曲も、古くからのファンにはたまらないはずだ。高田渡は56歳のまま、画面の中で生き続けている。(文:伊藤隆剛/ライター)
伊藤 隆剛(いとう りゅうごう)
ライター時々エディター。出版社、広告制作会社を経て、2013年よりフリー。ボブ・ディランの饒舌さ、モータウンの品質安定ぶり、ジョージ・ハリスンの 趣味性、モーズ・アリソンの脱力加減、細野晴臣の来る者を拒まない寛容さ、大瀧詠一の大きな史観、ハーマンズ・ハーミッツの脳天気さ、アズテック・カメラ の青さ、渋谷系の節操のなさ、スチャダラパーの“それってどうなの?”的視点を糧に、音楽/映画/オーディオビジュアル/ライフスタイル/書籍にまつわる 記事を日々専門誌やウェブサイトに寄稿している。1973年生まれ。名古屋在住。
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