「眠る時間があるならそれほど過酷ではない」と思ってしまう感覚の麻痺がコワい…

『ちょっと今から仕事やめてくる』
(C)2017 映画「ちょっと今から仕事やめてくる」製作委員会
『ちょっと今から仕事やめてくる』
(C)2017 映画「ちょっと今から仕事やめてくる」製作委員会
『ちょっと今から仕事やめてくる』
(C)2017 映画「ちょっと今から仕事やめてくる」製作委員会
『ちょっと今から仕事やめてくる』
(C)2017 映画「ちょっと今から仕事やめてくる」製作委員会

ラブコメ、アクション、ホラー……。どんな映画でも、ついつい“子育て”に結びつけて見てしまうママさんライターが、話題作をママ目線で取り上げます! 今週の作品は『ちょっと今から仕事やめてくる』です。

【ついついママ目線】『ちょっと今から仕事やめてくる』前編

過労のすえ自殺した電通の社員・高橋まつりさんの母親が問題の改善を訴えて、インタビュー出演や講義を行なったそうで、再びマスコミで見かけることが多くなった。ニュースを見るたび、同情の念と不安で重苦しい気持ちになる。ブラック企業という言葉が定着して久しいが、いじめ問題と同じでなかなか容易に改善する問題じゃない。

これって誰トク!?の大変さ。思春期のコドモは複雑すぎる!

そんななかで公開されるのが、社会問題を描いた『ちょっと今から仕事やめてくる』。北川恵海原作の同名ベストセラーの映画化で、とぼけた口調のタイトルながら、ブラック企業のパワハラ上司の下で働く青年・隆が自殺願望を持つという、しんどい内容のヒューマンドラマだ。

主人公・隆の睡眠時間は取れているようだし、作中に登場する会社は“ブラック企業”と言うにはユルい気もする。思い返せば、自分自身も若い頃はサービス残業で終電というのが常態化していたし、慢性的な睡眠不足でとにかく眠りたいという欲求しか頭にない時期があった。

いや、でも、“睡眠時間が取れているならそれほど過酷ではない”と思ってしまうぐらい感覚が麻痺している日本の労働状況がおかしいのだろう。

我が子はまだ社会人ではないが、そんな働き方をしていれば、ちょっとそれはおかしいよ!と声をかけずにはいられないだろう。

それに、劇中のパワハラ上司は酷すぎて、ここまでやる人が現実にいるの?と思ってしまう。それでも、常軌を逸したパワハラ上司が非現実的で馬鹿馬鹿しく見えないのは、会社の雰囲気がリアルだからだ。営業成績を競わされ、上司のほうがおかしいと声を上げる者はなく、疲弊して淀んだ空気が漂っている。

あそこまで理不尽な上司に出会ったことはないが、この空気は初めて見る気はしない。また、気力を奪われた隆が、ゴミ屋敷状態になった部屋で、眠らなければならないのに寝付けずに時計の秒針音に追い立てられるシーンの空気も身につまされて、こちらまで冷や汗が出てくるようだ。

後編「軽いノリのとぼけたタイトルの裏に秘められた切実な願いとは?
」に続く…

『ちょっと今から仕事やめてくる』は5月27日より全国公開される。