(…前編「眠る時間があるならそれほど過酷ではない」と思ってしまう感覚の麻痺がコワい…」よりつづく)
【ついついママ目線】『ちょっと今から仕事やめてくる』後編
ブラック企業のパワハラ上司のもとで働き、自殺願望を持つ青年・隆を描いた、『ちょっと今から仕事やめてくる』が公開される。
もし、こんな状況に我が子が置かれたら、と思うとたまらない。過酷な労働状況が悪いのだけれど、睡眠時間も神経も感覚も磨り減らして麻痺して、こんな状態はおかしいと思えなくなることが怖い。
タイトルは軽いノリでとぼけた口調だが、それには意味がある。会社を辞めることをひとつの選択肢と捉えて、命を捨てるぐらいなら軽い気持ちで考えてみては?というメッセージだ。
隆がヤマモトに出会えたのはラッキーだし、かなりドラマティックだ。映画版はさらにリアリティがなくて、いささかファンタジックなぐらいに思える。ほとんどの人はヤマモトのような存在に出会うことはできないだろう。だからこそ、親が気づかせてあげることができれればいいと思う。会社を続けるのも辞めるのも、あなたが決めればいいんだよ、あなたの人生は自分で決めていいんだよ、と。そこまで伝えられなくてもせめて、あなたがいなくなったらどうしようもないぐらい悲しむ人がここにいるよ、ということは伝えたい。
前述した、過労で自殺した電通の社員・高橋まつりさんの母親の映像が脳裏を過ぎる。母親は会社の問題を指摘しつつ、「あのとき私が行って、抱きしめてあげなければならなかった、私のせいでもある」とインタビューで話していた。そう語る手には娘が学生時代に愛用していたという、携帯ストラップのぬいぐるみが握られていた。使い古されてくたびれたぬいぐるみからは、まつりさんの生きていた証が伝わってくる。
母親の無念、悲しみ、怒り、後悔、苦しみはいかほどのものだろう。少し想像するしかない部外者でさえ辛くなるぐらい大きいはずだ。
まつりさんの母親の言葉を教訓にするのは安直かもしれないけれど、それでもやっぱり我が子が窮地に追い込まれた時にはなんとしてでも救いたいと思うのが親の本音だ。
子どもの心の悲鳴を察知して、抱きしめてあげられれば、事態を好転させることができるかもしれない。子どもが窮地に立たされたときには、どうか抱きしめてあげられますようにと願う。お母さんはここにいるよ、そう我が子に伝えられるだけでも、親の存在意義は十分にあると思う。(文:入江奈々/ライター)
『ちょっと今から仕事やめてくる』は5月27日より全国公開される。
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