第70回カンヌ国際映画祭が28日(現地時間)に閉幕、コンペティション部門の最高賞パルムドールをスウェーデンのリューベン・オストルンド監督の『The Square』が受賞した。
『フレンチアルプスで起きたこと』が第67回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門審査員賞に輝いたオストルンド監督は初のコンペティション出品で、美術館のキュレーターが企画した展覧会「The Square」が引き起こす騒動を描く不条理劇。
コンペ部門にエントリーしていた河瀬直美監督の『光』は惜しくも受賞を逃したが、前日発表のエキュメニカル審査員賞を受賞。キリスト教関連の映画製作者、映画評論家によって選定される賞で、日本人では2000年に青山真治監督の『EUREKA(ユリイカ)』以来の受賞。日本人女性監督としては初となる。
事前に業界紙などの星取表の評価が高く、パルムドール有力視されていたフランス作品『120 battements par minute(原題)』はグランプリを受賞した。同作は第61回にパルムドールを受賞した『パリ20区、僕たちのクラス』で脚本を担当したロバン・カンピヨの監督作。1990年代のフランスで、エイズに対する社会の無関心に抗議し、「ACT UP PARIS」という団体で活動する人々を描いた。
脚本賞は『The Killing of A Sacred Deer(原題)』のヨルゴス・ランティモスとエフティミス・フィリップと『You Were Never Really Here(原題)』のリン・ラムジーが受賞。前者は『ロブスター』で第68回カンヌ国際映画祭で審査員賞に輝いた監督&脚本コンビであり、同作は『The Beguiled(原題)』のコリン・ファレルとニコール・キッドマンのもう1本の共演作でもある。リン・ラムジーは『少年は残酷な弓を射る』で知られる女性監督で、本作でも監督を務めている。
審査員賞はロシアの『Loveless(原題)』(アンドレイ・ズビャギンツェフ監督)、新人監督賞に当たるカメラドール賞は、フランス=ベルギー合作の『Jeune Femme(原題)』のレオノア・セラーレ監督が受賞し、日本人で河瀬直美監督以来20年ぶりの受賞が期待された平柳敦子監督(『Oh Lucy!(原題)』は惜しくも賞を逃した。
男優賞は、脚本賞も受賞した『You Were Never Really Here(原題)』のホアキン・フェニックス。
女優賞はファティ・アキン監督の『In The Fade(英題)』に主演したダイアン・クルーガー。ハリウッド作品やフランス映画で活躍する彼女が、母国語であるドイツ語で演じているのも話題になった。
記念すべき第70回を迎えた映画祭にはNetflix製作の2本(ポン・ジュノ監督『オクジャ』、ノア・バームバック監督『The Meyerowitz Stories(原題)』)がコンペティション部門にエントリーした。だが、フランスでの公開は映画館ではなく配信のみという形でコンペ部門にエントリーした2本について、同部門審査員長のペドロ・アドモルバル監督が初日の記者会見で「個人的には、大画面で見られない映画にパルムドールを含む他の賞が授賞されるのは想像できない」と発言し、騒然となった。アルモドバルは翌日には「私も他の審査員も、Netflix作品2本と他のコンペ出品作を区別することはない。私たちは、映画祭が選んだ19本について芸術的に審査する」と発言したが、結果としてNetflix作品2本は受賞には至らなかった。
ある視点部門のグランプリはイランのモハマド・ラスロフ監督の『A Man of Integrity(英題)』が受賞し、黒沢清監督の『散歩する侵略者』は受賞を逃した。
また、ある視点部門の審査員賞は、16歳の少女の妊娠について、少女とその母の視点で描いたミシェル・フランコ監督の『April’s Daughter(原題)』、女優賞はジャスミン・トリンカ(『Fortunata(原題)』)、監督賞はテイラー・シェリダン(『Wind River(原題)』)、詩的物語賞はマチュー・アマルリックが監督を務めた『Barbara(原題)』が受賞した
主な受賞結果は以下の通り。
パルムドール
『The Square(英題)』
グランプリ
『120 battements par minute(原題)』
監督賞
ソフィア・コッポラ(『The Beguiled(原題)』)
審査員賞
『Loveless(原題)』
男優賞
ホアキン・フェニックス(『You Were Never Really Here(原題)』)
女優賞
ダイアン・クルーガー(『In The Fade(英題)』)
脚本賞
ヨルゴス・ランティモス、エフティミス・フィリップ(『The Killing of A Sacred Deer(原題)』
リン・ラムジー(『You Were Never Really Here(原題)』)
カメラドール(新人監督賞)
レオノア・セラーレ(『Jeune Feme(原題)』)
短編部門パルムドール
『A Gentle Night(英題)』
第70回記念名誉賞
ニコール・キッドマン
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