型破りな師弟コンビが繰り広げる、究極の“推し活”を描く
『さよならくちびる』(19年)『月光の囁き』(99年)の塩田明彦が原作・脚本・監督を手掛ける映画『春画先生』が、10月13日より劇場公開されることが決定した。
・塩田明彦監督初期の究極エロス『月光の囁き』『害虫』をリバイバル上映!
本作は、型破りな師弟コンビが繰り広げる、究極の“推し活”を描く異色のコメディ。『劇場版 きのう何食べた?』(21年)『臨場 劇場版』(12年)などで数々の個性的な役柄を演じてきた内野聖陽が、変わり者の春画研究家を熱演。注目の若手女優・北香那が、しっかり者の弟子・弓子を演じる。
これまで春画は映画でもタブーとされ、性器部分の描写は映倫審査でボカシ加工が必要だったが、本作は劇映画初のR15+で認証され、日本映画史上初、無修正で浮世絵春画がスクリーンに映し出される。
春画とは、平安時代からはじまり江戸時代の木版画技術の発達で全盛期を迎えた人間の性的な交わりを描いた画。鈴木春信、鳥居清長、喜多川歌麿、葛飾北斎、歌川国貞など、著名など浮世絵師のほとんどが春画を手がけていた。
江戸時代、春画は単に好色な男性のためのものではなく、身分を問わず多くの老若男女に愛好された。その根底には、西洋のキリスト教文化が入る以前の日本人が持っていたとされる、性をおおらかに肯定する精神が横溢している。
超一流から三流まで多くの絵師、彫師、刷師たちが、表の浮世絵で発揮できないその持てる全画力と全精力を注ぎ、とことん真面目に人の性を笑い画として表現したものが春画だ。幕府から禁止された禁制品だからこそ、とどまることを知らぬ芸術の域に達し、庶民から大名までを虜にした真の江戸のエンターテイメントだった。
物語は、将来への夢もないまま無為な日々を過ごしていたウェイトレスの春野弓子の「私の人生にこの先、面白いことなど何ひとつ起こらないだろうと感じていたあの日…」というモノローグから始まる。
“あの日”、いつものように老舗喫茶店で働いていた弓子は、人目をはばからず春画をじっと見つめるシブい中年男性と出会う。彼は、弓子に春画とは何かを突然説き出し、詳しく知りたければ訪ねてこいと去っていく。
この男、芳賀一郎は高名な春画研究家で、妻に先立たれ世捨て人のように春画の研究に没頭していた。春画への興味と芳賀に一目ぼれしてしまった弓子は芳賀宅をたずね、美と興奮の坩堝の春画講座を受けはじめる。やがて芳賀が執筆する春画大全の編集者・辻村や、芳賀の亡妻の姉・一葉の登場で波乱の予感が…。
主演の内野は、「性愛についての奥深さを感じさせるちょっと笑える、微笑ましい『おとぎ話』のような感覚を持ちました」と本作の世界観に感銘を受けつつ、「春画先生という役は、普通の人にはない距離感の人で、大きな喪失感をもってますけど、とても愛すべき研究者だと思いました」と自身の役柄について語った。
また、塩田監督は「なんといっても絶品なのは内野聖陽演じる春画先生。心に詰まった春画への思い、さらには愛する女性たちへの想いがいまにもはち切れそうで、気がつくと全身から不思議な震えと波動を発しているような人物を、えもいわれぬユーモアと、完璧といってもいい役作りで体現してくれました」と内野の演技を絶賛した。
『春画先生』は10月13日より全国公開。
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