(…前編「セクシーだけじゃない! 斎藤工の魅力を改めて解説」より続く)
【この俳優に注目】斎藤工/後編
海外進出にも意欲!
オフの過ごし方や内面から出るものが俳優にとって大事だと考えている斎藤だけに、おそらく下積み時代に得た感覚や経験が俳優としての礎ともなっていることだろう。もしデビュー直後にすぐブレイクを迎えていたら、いまのような斎藤工を私たち楽しむことはできなかったかもしれないと思うと、本人にとっては不遇の時代だったかもしれないが、俳優としても人としても、深みを増すために意味のある時間であったことは言うまでもない。
筆者はこれまでに、インタビューをさせてもらう機会に数回恵まれたが、そのときの印象としては、周りに対しては紳士的であり、映画に対しては真摯的。どんな質問にも出演作への愛情をのぞかせながら一言一言を紡ぐように丁寧に語り、好きな映画や監督について話す姿はひとりの映画少年のような無邪気さもありながら、監督としての鋭さも見せる。映画への造詣の深さは有名だが、ライフワークとして移動映画館の活動も行うなど、映画全体に対する熱い思いを感じずにはいられない。
しかし、以前行ったインタビューのなかでは、「客観的には自分のことを役者として全く信用していない」とも話しており、自分に対してはいたって冷静に分析。とはいえ、それはネガティブではなく、その信用のなさがある意味原動力となっているのかもしれない。つまり、信用していないからこそ、どこまで自分が行けるのかをつねに自問自答し続けているのであり、それが俳優としてさまざまな挑戦へと駆り立てているのだろう。
「10年後につまらない人間にならないために、自分の裾野を広げていく作業をしている」とも教えてくれたが、自分のことを客観的に見ることができるというのも強みのひとつといえる。そして、調子に乗ってしまえば終わるだろうという危機感をつねに持っているのも、おそらく遅咲きだからこそ培われた意識。それゆえに、しばしば自虐的ともとれる発言を繰り返しているが、売れてくれば周りから言われなくなるであろう苦言を自ら呈することで、どこかバランスをとっているようにも見える。
志村昌美(しむら・まさみ)
映画宣伝マンとして洋画や邦画の宣伝に携わったのち、ライターに転向し、現在は映画紹介やインタビューなどを中心に執筆。イタリアとイギリスへの留学経験を経て、日・英・伊・仏のマルチリンガルを目指すべく日々精進中。ハリウッドの大作よりも、ヨーロッパ系の小規模な作品の方が気になりがち。
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