罪を負った娘を演じた若手演技派・山田杏奈、見事な東北弁と役作りへのアプローチ語る『山女』
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間引きされる赤ん坊を川に捨てる役目や、死体の埋葬の仕事を引き受ける一家
『リベリアの白い血』(15年)『アイヌモシリ』(20年)の福永壮志監督が、閉鎖的な村社会と神秘的な山々を背景に運命に翻弄される女性の生き様を描く映画『山女』。本作より、山田杏奈と永瀬正敏が舞台となる岩手県遠野市の方言を話す本編映像を紹介する。
・間引きされた赤ん坊を川へ…寒村の過酷な暮らし映し出す『山女』予告編! 村人から蔑まれる女性が自身の生を選び取るまで
本作は、柳田國男の名著「遠野物語」から着想を得たオリジナルストーリー。自然を前にしてあまりに無力な人間の脆さ、社会の持つ閉鎖性と同調圧力、身分や性別における差別、信仰の敬虔さと危うさを浮き彫りにしながら、1人の女性が自らの意志で人生を選び取るまでを描く。
大飢きんに襲われた18世紀後半の東北の村。先代の罪を負った家の娘・凛は、人々からさげすまされながらもたくましく生きている。ある日、飢えに耐えかねた父の伊兵衛が盗みを働く。父の罪を被った凛は自ら村を去り、禁じられた山奥へと足を踏み入れ、伝説の存在として恐れられる“山男”と出会う…。
主人公の凛を演じるのは、『ひらいて』(21年)『彼女が好きなものは』(21年)などの山田杏奈。また、村人たちから恐れられる伝説の“山男”に森山未來、生活に苦悩する凛の父親・伊兵衛に永瀬正敏、そのほか二ノ宮隆太郎、三浦透子、山中崇、川瀬陽太、赤堀雅秋、白川和子、品川徹、でんでんら実力派俳優たちが集結した。
監督・脚本を務めるのは、⺠族やルーツにフォーカスを当ててきた福永壮志。初の⻑編劇映画である『リベリアの白い血』は第65回ベルリン国際映画祭パノラマ部門に出品、2作目の『アイヌモシリ』は第19回トライベッカ映画祭で審査員特別賞を受賞し、国際舞台でその存在感を強めている。共同脚本には、NHK連続テレビ小説『らんまん』を手がける劇作家の⻑田育恵。
紹介する本編映像は、父親の伊兵衛(永瀬)が寝静まった夜、凛と弟の庄吉(込江大牙)が、囲炉裏の僅かな火を頼りに草鞋を編む日常を描く。先代の罪を背負い、卑しい身分に貶められている凛の一家は、間引きされる赤ん坊を川に捨てる役目や、死体の埋葬の仕事を引き受け、家では草鞋編みの内職を行い、せめてもの食い扶持を稼いでいる。
庄吉は家の前に落ちてきた雀の雛を埋めたと告げ、「その時思ったった、こいづはこれで終わりなんだべかどて。早池峰山さ行がねぇのがな?」と訊く。凛は「あそごさ行くのは人間の魂だけだ」と答える。
続けて庄吉が「人間なら、みんな行けるのが?」と尋ねると、凛は「罪人も善人も、貧乏人も金持ちもみんなだ。早池峰の女神様は誰だって迎えでくれんだもの」と語る。凛の穏やかな表情から、理不尽な逆境の中でも早池峰山を心の拠り所として、ひたむきに一家を支えてきたことが窺える。
これらのセリフは、舞台となる岩手県遠野市の方言である遠野弁だ。脚本の段階からセリフを遠野弁に想定していた福永監督は、「遠野弁の方言のセリフを方言の先生に発音してもらったものを録音して、俳優の皆さんと共有して、撮影前にしっかり準備してもらいました」とこだわりを見せる。
さらに「やはり昔の話なので、どうしてもフィクション色は強くなるんです。それでもできるだけリアリティを持たせたくて、昔話されていた言葉により近い方言を生かすことで、少しでも現代との差を埋めようとしました」と続け、遠野弁が作品の世界観の重要な要素であることを説く。
これに対し主演の山田は「遠野弁のセリフを話すことで、あの時代のあの世界に生きている子だという自覚も芽生えました」と、遠野弁が役へのアプローチにも繋がっていたことを明かしている。山田は家で実際に草履を編む練習を重ね、余念がない準備で撮影に臨んだという。
映画『山女』は6月30日より全国順次公開。
・[動画]山田杏奈主演、森山未來×永瀬正敏が閉鎖的な村社会を描く/映画『山女』予告編
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