【映画を聴く】『アリーキャット』前編
窪塚洋介は卍LINEとして独自の音楽を継続中
猫が行方不明になる冒頭のシーンが、どこかレイモンド・チャンドラーのハードボイルド小説をロバート・アルトマンが映画化した『ロング・グッドバイ』を思い出させる。榊英雄監督の最新作『アリーキャット』は、社会の底辺でひっそりと生きる元ボクサーのマル(窪塚洋介)と整備工のリリィ(降谷建志)が、ワケありシングルマザーの冴子(市川由衣)をストーカーや闇社会の男たちから救い出すバディ・ムービーだが、その言葉から連想するほど快活な映画ではない。後味としてはほろ苦く、マルとリリィにはフィリップ・マーロウ的な哀愁が終始漂っている。
・『アリーキャット』窪塚洋介×降谷建志(Dragon Ash)インタビュー
窪塚洋介と降谷建志という、2つの個性がもたらすケミストリーが作品の大きな原動力になっていることは間違いない。窪塚は現場での降谷の存在が自分のテンションを高めてくれたと語り、いっぽうの降谷は撮影が終わった後でも窪塚のことを“マル”と呼んでいるというから、両者のマッチングは榊監督の思惑通り、もしくはそれ以上だったと思われる。
ふたりの共通点としてまず挙げられるのが音楽だ。窪塚洋介はレゲエ・ミュージシャン、卍LINEとしての活動がすでに10年を超え、降谷建志は言わずと知れたDragon AshのKjとして、今年デビュー20周年を迎えている。活動の比重こそ違うものの、音楽と芝居をボーダレスに行き来し、同じ熱量で立ち向かう姿勢を見れば、ウマが合うのは当然のように感じられる。
(後編「〜窪塚洋介と降谷建志による遅すぎる青春映画」に続く…)
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