(…前編「窪塚洋介と降谷建志、音楽と芝居を自由に行き来する表現者ふたりの熱い競演!」より続く)
【映画を聴く】『アリーキャット』後編
Dragon Ashとしてカリスマであり続ける降谷建志
役者と音楽の二足のわらじを実践している人として多くの人が思い浮かべるのは、福山雅治や小泉今日子、及川光博、原田知世、今ならディーン・フジオカや星野源、金子ノブアキ、野田洋次郎(RADWIMPS)あたりだろうか。このうち、ディーン・フジオカ以外は本業がミュージシャンで、キャリアの途中から役者の仕事にも進出した人たちだ(ディーン・フジオカも音楽活動にはもともと熱心で、香港のクラブでラップをしていたところをスカウトされたのだとか)。
・[動画]窪塚洋介 × 降谷建志、奇跡の初共演で急接近、今ではバディに/『アリーキャット』インタビュー
本作『アリーキャット』で、本格的な役者デビューを飾った降谷建志も、実は2013年のNHK大河ドラマ『八重の桜』などで役者としての仕事をいくつか経験済み。そもそも父親が俳優の古谷一行で、Dragon Ashのフロントマンとしてカリスマ視されている人だから、今回の役者進出に違和感を覚える人はそういないだろう。本作ではリリィという掴みどころのないキャラクターを、堂に入った落ち着きぶりで演じている。
そんな窪塚洋介と降谷建志が主演するとなれば、どちらかの楽曲が主題歌に使われそうな気がするが、本作ではふたりとも音楽にはまったく関わっていない。劇中曲および主題歌を担当するのは、榊英雄監督の妻でシンガー・ソングライターの榊いずみ。現在30〜40代の人には“橘いずみ”と言った方が通じるかもしれない。「失格」や「バニラ」などのメッセージ性の強い曲で知られ、当時は尾崎豊を引き合いに出させることなどもあった人だ。
何にでもなれる、どこにでも行けるという無限の可能性を“青春”とするなら、この映画はマルとリリィによる遅すぎる青春映画と言えなくもない。ほろ苦くも風通しのいいエンディングは、見る者に、ふたりのこれからを自由に想像させてくれる。(文:伊藤隆剛/ライター)
伊藤 隆剛(いとう りゅうごう)
ライター時々エディター。出版社、広告制作会社を経て、2013年よりフリー。ボブ・ディランの饒舌さ、モータウンの品質安定ぶり、ジョージ・ハリスンの 趣味性、モーズ・アリソンの脱力加減、細野晴臣の来る者を拒まない寛容さ、大瀧詠一の大きな史観、ハーマンズ・ハーミッツの脳天気さ、アズテック・カメラ の青さ、渋谷系の節操のなさ、スチャダラパーの“それってどうなの?”的視点を糧に、音楽/映画/オーディオビジュアル/ライフスタイル/書籍にまつわる 記事を日々専門誌やウェブサイトに寄稿している。1973年生まれ。名古屋在住。
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