【興行トレンド】アニメーション映画『スパイダーマン:スパイダーバース』の続編『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』が6月16日から公開される。一足早く6月2日から公開されたアメリカでは、初日3日間の興収が1億2050万ドルをあげた。これは今年の公開作では『ザ・スーパーマリオブラザース・ムービー』に次ぐ年間2位の大ヒットだ。11日時点で興収2億2500万ドルに達し、前作の総興収1億9000万ドルを早々と上回った。
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来年公開予定の後編と合わせ、壮大な物語を堪能できる!
ピーター・パーカー亡きあと、スパイダーマンを継承した⾼校⽣マイルス・モラレス。ヒーローとして戦う毎日を送る一方、人生の進路を決断する時期にさしかかり、両親との関係はぎくしゃくしていた。ある夜、共に戦ったグウェン・ステイシーが突如やってくる。マイルスはグウェンを追って別の次元に飛び込む。そこで出会ったのは、様々なユニバースから選び抜かれたスパイダーマンたちだった。
前作『スパイダーマン:スパイダーバース』はアメリカで18年12月、日本で19年3月に公開。アメリカでは興収1億9000万ドルをあげる大ヒットとなり、アカデミー賞で長編アニメーション映画賞を受賞した。長編アニメ映画賞はピクサーやウォルト・ディズニーが数多く受賞しているが、『スパイダーマン~』を製作したソニー・ピクチャーズ・アニメーションが受賞するのは初めてだった。本作が観客・アカデミー会員双方の支持を集めたのはなぜか。大きく3つのポイントがありそう。
1つめがビジュアルスタイル。手描きアニメの2DとCGアニメの3Dを融合させ、コミックブックの雰囲気を生かしたビジュアルは、これまでのアニメーションはない斬新なものだった。
2つめが時代に合った主人公。高校生マイルスはアフリカ系とヒスパニック系の両親を持つ。これまで実写映画化された白人高校生ピーター・パーカーが主人公ではない。近年のハリウッドでは多様性が重視されているが、マイルスが主人公の原作コミックを選び出し、アニメ化しようと考えた製作陣は今の時代をしっかりと読んでいたといえそう。
3つめが「マルチバース」をいち早く映画の設定に取り入れたこと。「マルチバース」はパラレルワールドのように様々な世界が同時に存在するという考え方。実写映画では『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(アメリカ公開21年、日本公開22年)で新たな世界観としてお披露目されたが、『スパイダーマン:スパイダーバース』の方が早かった。同作では、何者かが時空を歪める事態が発生し、異なる次元で活躍する様々なスパイダーマンがマイルスの世界に集まる。彼らは協力して時空の歪みを正そうと奮闘する。
『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』では前作のコミックブック風ビジュアルをパワーアップ。例えば、スパイダーマン・インディア(パヴィトル・プラパカール)の世界はインドの伝統的な文化を取り入れ、インドのコミックシリーズにインスピレーションを得て作成。スパイダー・パンク(ホービー・ブラウン)の世界は70年代のロンドンのパンクシーンをベースに、アートワーク、雑誌、コミックをリサーチして作成された。
ストーリーの新味はスパイダーマンの設定への挑戦だ。別の次元へ旅立ったマイルスは、スパイダーマンたちがみな受け⼊れてきた定めを知る。それは、この世界と自分の愛する人を同時に救えないということ。マイルスは両⽅を守り抜くことを決意するが、それがマルチバース全体を揺るがす危機を招くことになる。
実は『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』は2部作となっており、後編は来年公開予定。2部作で描かれる壮大な物語を堪能したい。(文:相良智弘/フリーライター)
・[動画]スパイダー・グウェンは華麗なるスパイダーウーマン!映画『スパイダーマン:スパイダーバース』映像
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