(…中編「清水富美加の心境にも納得? 食人モンスターのツラさがリアル」より続く)
【元ネタ比較】『東京喰種 トーキョーグール』後編
出家騒動が奏功⁉
石田スイ原作の人気コミック『東京喰種』が実写映画化された。人間を喰う怪人“喰種(グール)”となった大学生・金木研の苦悩がリアルに描かれ、ビジュアルにもこだわりを見せる。
喰種が持つ器官“赫子(カグネ)”もそのひとつで、体から飛び出す異形の武器アイテムだ。龍の尾のようだったり蝶の羽のようだったり喰種によって違い、原作者・石田スイによる絵は不気味で美しく、それをCGを用いて再現。赫子を操る喰種と赫子を材料にした武器・クインケで対抗する捜査官との死闘はスピード感と重量感があり、アクションシーンは手に汗握る。喰種は人類の敵で駆逐すべきだ、と容赦なく襲いかかる人間の方がよほど心なく見えて、カネキたち喰種を自然と応援してしまうはずだ。
また、喰種は喰種らしいパワーを放出するときなど目が赤く光る赫眼(カクガン)となり、半喰種のカネキは片目だけが赤く光る。実写版での再現はこれもまたスタイリッシュで美しい。素顔を隠すために喰種はマスクを使用するが、カネキのマスクはただの仮面でなく金属の鋭い歯が並ぶ黒い片目のマスクでやたらとカッコよく、これも実写版で素晴らしい出来栄えだ。
特殊パワーやらオッドアイやらマスクやら、何かと中二病臭さが漂うが、完成度高くてシラケることはない。
キャストも主人公のカネキ役に扮する窪田正孝はイメージぴったり。さすが原作者じきじきの要望なだけはある。
アラサーの窪田だが、今クールのTVドラマシリーズ『僕たちがやりまし』では高校生役をこなす彼のことだから大学生役は違和感なし。ナイーブで取り柄はないが、追い込まれると肝の座ったところを見せるカネキを力演。坊ちゃんヘアでも赫眼にマスクをつけた黒装束姿はカッコいい。
でも、例の騒動があったために清水もなんらかの悩みを持っていたんだなぁというフィルターでどうしても見てしまい、これが怪我の功名というべきか、トーカと清水がダブって見えるのだ。
対する捜査官側は、白髪のマッドサイエンティストのようないかにも漫画っぽいキャラの真戸役に大泉洋。珍しく悪役だが、個性派俳優の大泉は堂々たるもの。亜門役の鈴木伸之はクールな亜門とはイメージが少し違うが、カネキとのバトルでは見応えあるアクションを披露してくれた。
原作ではまだまだこの先が描かれる本作。出演者がどうなるのか不安はあるが、続編が作られるならぜひ見てみたい。(文:入江奈々/ライター)
『東京喰種 トーキョーグール』は7月29日より全国公開される。
入江奈々(いりえ・なな)
兵庫県神戸市出身。都内録音スタジオの映像制作部にて演出助手を経験したのち、出版業界に転身。レンタルビデオ業界誌編集部を経て、フリーランスのライター兼編集者に。さまざまな雑誌や書籍、Webサイトに携わり、映画をメインに幅広い分野で活躍中。
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