初演は大失敗に終わった人気オペラ、ソフィア・コッポラはどう料理した?

#ソフィア・コッポラ#映画を聴く

『ソフィア・コッポラの椿姫』
(C)Yasuko Kageyama
『ソフィア・コッポラの椿姫』
(C)Yasuko Kageyama

【映画を聴く】『ソフィア・コッポラの椿姫』前編
オペラというよりは映画的な“女性の話”

『ソフィア・コッポラの椿姫』は、そのタイトル通り、映画監督のソフィア・コッポラがオペラの古典『椿姫』を演出した舞台を映像化したもの。2016年5月にローマ歌劇場で行なわれた公演は、全15回がたちまちソールドアウトになったという。フランス王室の豪壮かつ優雅な日常を圧倒的色彩美で映像化した『マリー・アントワネット』と同じく、コッポラ監督ならではの解釈を大々的に導入。1853年の初演以来、数限りなく上演されてきたジュゼッペ・ヴェルディ作曲の悲恋オペラに新風を吹き込んでいる。

元妻ソフィア・コッポラへの思いを深読みしたくなる!

クラシックやオペラに興味がなくても、『椿姫』というタイトルはおそらく誰もが一度は目にしたことがあるだろうし、冒頭近くで歌われる「乾杯の歌」のメロディを聴いてピンとこない人はいないだろう。アレクサンドル・デュマ・フィスの原作を基にフランチェスコ・マリア・ピアーヴェが台本を書き、ヴェルディが曲をつけた『椿姫』は、もともと彼がヴェネチアのフェニーチェ劇場のために書いたオペラで、全3幕(約140分)で構成される。

パリの社交界に生きる高級娼婦ヴィオレッタと田舎出身の朴訥な青年アルフレードの出会いから悲劇的な別れまでを描いたこのメロドラマ、娼婦をヒロインにしていることから初演は大失敗に終わったというが、そのストーリーの普遍性や分かりやすさから、現在では途切れることなく世界中で上演される人気オペラとなっている。特にロシア人ソプラノ歌手のアンナ・ネトレプコがヴィオレッタを演じた2005年のザルツブルグ音楽祭での公演は、シンプル極まりない舞台のインパクトも強烈で、ある意味ではコッポラ監督版よりも21世紀らしい『椿姫』に仕上がっている。

コッポラ監督本人はもともとオペラや『椿姫』が好きだったわけではないらしく、子どもの頃に父親のフランシス・フォード・コッポラに連れられてNYのリンカーン・センターなどでオペラを見ても、退屈で眠っていたという。それもあってか、本作はいい意味でオペラというよりは映画的で、彼女の監督した『ヴァージン・スーサイズ』や『ロスト・イン・トランスレーション』、あるいは先述の『マリー・アントワネット』に通じる“女性の話”になっているのが大きな特徴だ(後編へ続く…)。

【映画を聴く】『ソフィア・コッポラの椿姫』後編/どこまでもリッチ! 芸術家一家に生まれた才媛だからこそ作れた『椿姫』