R15+の血みどろホラーが大ヒット! 今までとは違う粘り腰でパワー衰えず

#映画興収レポート

『IT イット “それ”が見えたら、終わり。』
(C)2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
Photograph : Shane Leonard
『IT イット “それ”が見えたら、終わり。』
(C)2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
Photograph : Shane Leonard

【映画興収レポート/11月】
前作から3ヵ月で公開の『HiGH&LOW』3弾も大ヒット

11月公開作の1位は『IT イット “それ”が見えたら、終わり。』(15.3億円)。小さな田舎町、少年ジョージが行方不明となり、兄ビルとその友人たちは、犯人を捜し始める。やがてその背後に不気味なピエロの存在があることを知る……。スティーブン・キング原作でテレビドラマ化されたこともある人気作。アメリカでは興収3億2700万ドルをあげ、『エクソシスト』を上回りホラー映画歴代興収新記録を樹立した。大ヒットの勢いそのままに、日本でもヒットしている。

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珍しいのは観客動員数の推移。アクション映画やホラー映画は、一部のファンが公開日に一気に押し寄せる傾向が強く、1週目の週末の興行成績が良くても、2週目にがくんと落ちることが多い。『イット』と同じ11月3日に公開された『マイティ・ソー/バトルロワイヤル』は週末2日間で興収2億3100万円をあげ『イット』を上回ったが、2週目の週末は約40%減で『イット』を下回った。一方、『イット』は2週目の週末は前週比22%増。公開時点で上映スクリーン数は202だったが、集客が良かったことから2週目は急きょ上映スクリーン数を254に広がった(うち31スクリーンは4D上映)。上映スクリーン数が増えても1スクリーンあたりの客足があまり落ちなかったことで、22%増を記録した。3週目は前週比14%減、4週目は24%減。落ち幅はなだらかで腰の強い興行を展開している。

近年、ホラー映画にヒット作は生まれてこなかった。98年『リング』、99年『リング2』の大ヒットで「Jホラーブーム」が巻き起こる。00年『リング0』(興収16億円)、02年『ザ・リング』(17.5億円)、03年『呪怨2』(11億円)、04年『着信アリ』(15億円)と毎年10億円超えを連発するが、10年代に入ると伸び悩み、目立ったのは13年『クロユリ団地』(10.2億円)、16年『貞子vs伽椰子』(10億円)くらいだった。

『イット』は「刺激の強い殺傷・出血・肉体損壊の描写がみられる」(映倫のサイトより)ことから「R15+」指定(15歳以上が鑑賞可能)となっている。若者を中心に「R15+」ならではの刺激の強い怖さ」が口コミで広がり、大ヒットにつながったようだ。

2位は『マイティ・ソー/バトルロイヤル』(10.5億円)。『マイティ・ソー』シリーズとしては3作目にあたるが、初めて興収10億円を超えた。ハルクとタッグを組む話題性がコアファンを中心に受けたようだ。

3位は『HiGH&LOW THE MOVIE 3/FINAL MISSION』(9.3億円)。2作目から3ヵ月後の公開で、前作より興収がやや落ちるものの大ヒットとなった。(文:相良智弘/フリーライター)

[11月公開作ランキング]
1位『IT イット “それ”が見えたら、終わり。』15.3億円
2位『マイティ・ソー/バトルロイヤル』10.5億円
3位『HiGH&LOW THE MOVIE 3/FINAL MISSION』9.3億円
(11月26日時点。ムビコレ調べ)

相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。

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