原作と映像化された作品を、重箱の隅をつつくように細か〜く比較する【元ネタ比較】。今回は『鋼の錬金術師』を取り上げます。
【元ネタ比較】『鋼の錬金術師』前編
「ハガレン」の深〜い裏テーマは“生死観”
実写映画化が決定するとすぐに話題となって、キャストや1カットが情報解禁されるたびに物議をかもしていた『ハガレン』こと『鋼の錬金術師』が公開された。
原作は「月刊少年ガンガン」で2001年〜2010年まで連載された同名のファンタジー・アドベンチャー漫画。「銀の匙」や田中芳樹原作の「アルスラーン戦記」のコミカライズなどを手がける女性漫画家・荒川弘の初連載作品にして大ヒット作だ。
今やママ漫画家としても知られている荒川だが、名前もさることながら作風からも男性と思われていることが多かった。そんな荒川は「ハガレン」連載中に子どもを出産するが休載することはなく連載を続ける肝っ玉母さんぶりで、「ハガレン」が軽いファンタジーではなく深さも併せ持つのは、女性ならではの懐の深さにあるとも思える。
そう聞くと子どもだましのファンタジーと思うかもしれないが、錬金術は決して無から有を生じるものではなく、基本原理は“等価交換”であることがポイントだ。何かを得るためにはそれと同等の代償が必要なのだ。
エルリック兄弟は幼い頃から錬金術の修行を行って行く中で、この世には人には見えない大きな流れがあり、命は循環していることを否が応でも知り、錬金術の原理が代償を要する“等価交換”であることを学んでいく。
それは原作者の荒川弘を取り巻く環境が大きく影響していると思う。荒川は北海道の酪農と畑作を営む混合農家で生まれ育ち、子どもの頃から家畜の死や出産を目にしてきたようだ。荒川弘原作のエッセイの「百姓貴族」には家業を手伝っていた頃の暮らしぶりが綴られているし、実写映画化もされた「銀の匙」には命を食すということの重みが描かれるエピソードも登場する。「ハガレン」にも死生観が裏テーマとして根底に流れているのだ。
・中編「金髪の山田涼介に期待高まるも、ふたを開けてみると…」に続く…
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