今年も数多くの映画が公開されたが、その中から、映画ビジネスに詳しい男性ライターが選ぶベスト10を紹介! 作品内容だけではなく、興行面や宣伝戦略にも目配りしたチョイスに注目して欲しい。
・2位に240億円差! 15年連続、映画界のダントツ勝ち組は?
『メッセージ』
「ヒロインが異星人の文字を解読するうち、彼らの思考形式に影響を受け、時間を超越するようになる」設定が素晴らしい。SF映画らしくサイエンス(科学)の驚きが詰まっており、ラストは久々に「やられた〜」と感服した。原作の短編を映画的に膨らませた脚本、異星人や宇宙船のビジュアルも秀逸。
『ラ・ラ・ランド』
冒頭の高速道路でのミュージカルシーンから心をわしづかみにされる。シンプルなラブストーリーが良く、観客の気分をアゲる曲の数々が耳に残る。個人的にはライアン・ゴズリングの『シティ・オブ・スターズ』が一番のお気に入り。
『SING/シング』
悩みを抱える動物たちが歌で前向き変わっていく姿が共感を呼ぶ。キモはフランク・シナトラからレディ・ガガまで流れる曲の数々。洋楽好きなら引き込まれるが、長澤まさみやトレンディエンジェル斎藤さんなど日本語版の歌も素晴らしい。特に山寺宏一の『マイ・ウェイ』は鳥肌もの。
『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』
公開は16年だが、17年の正月映画としてチョイス。盲目の武術マスターに扮したドニー・イェン、武骨で毒舌なドロイドK-2SOなど登場キャラクターがみな生き生きとして、『スター・ウォーズ』らしい冒険活劇はうれしい限り。悲しいラストはシリーズでは異色。ダース・ベイダーの登場に歓喜し、レイア姫の若々しさにビックリ。
『レゴ バットマン ザ・ムービー』
「孤独に一人で戦う」バットマンの設定を生かしたストーリーがまず秀逸。そしてジョーカーやロビンなどバットマンの人気キャラから、サウロンやヴォルデモート、グレムリンなどワーナー関連の悪役キャラをぶち込み、映画通ならニヤリとするパロディがてんこ盛り。
『怪盗グルーのミニオン大脱走』
『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』を上回り、夏映画最大のヒットを記録したことにビックリ。囚人服のミニオンを宣伝の前面に出し、タイトルを『ミニオン大脱走』とした戦略が奏功した。USJのミニオン人気もヒットを後押し。
『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』
ホラー映画にしては珍しく、公開2週目で興収を増やし、その後も落ちの少ない興行を展開。興収20億円に迫り、2000年以降ではホラー映画最大のヒット作に。98年『リング』以来、久々に「口コミで怖さが広がる」作品となった。
『銀魂』
『東京喰種トーキョーグール』『ジョジョの奇妙な冒険』と興収が伸び悩む人気マンガの映画化が相次ぐ中、邦画実写最大のヒット作に。冒頭の銀さん(小栗旬)のオープニング曲からおふざけ全開。福田雄一監督が、ギャグやパロディが多い『銀魂』をうまく料理したことでファンも納得の出来栄えで、ファンが大勢映画館に足を運んだ。
『美女と野獣』
「大ヒット確実」といわれながら、興収125億円と、きっちり当てきる配給宣伝戦略が素晴らしい。アメリカ版のポスターは、ベルと野獣を中心に他のキャストも掲載したミュージカル風の構図。しかし日本版ではベルと野獣のみに焦点を当てたビジュアルにし、2人の愛の物語を強調した。
続編を作るドゥニ・ビルヌーブ監督の勇気に拍手。ビジュルもストーリーも素晴らしい。一方、リドリー・スコット監督は製作総指揮に回り、『エイリアン:コヴェナント』を監督したが、中身はイマイチ。こちらを作った方が良かったのでは? (文:相良智弘/フリーライター)
相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。
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