是枝裕和監督が、実際の子ども置き去り事件をベースに、過酷な状況下で生きる子どもたちの姿をリアルに描き、柳楽優弥にカンヌ国際映画祭で最優秀主演男優賞をもたらした『誰も知らない』(04年)。あれから13年、さまざまな“家族のかたち”を描き続けてきた是枝監督が、この10年間考え続けてきたことを全部詰め込んだと語る渾身の最新作が始動したことがわかった。
・是枝裕和監督がスピルバーグと『そして父になる』のハリウッドリメイクについて対談
再開発が進む中、ポツンと残された古い住宅街。日雇い仕事の父・治(リリー・フランキー)と息子の祥太(城桧吏)は“親子”ならではの連携プレーで万引きに精を出している。その帰り道、団地の廊下で凍えている幼い女の子を目にした治は思わず家に連れて帰ってしまう。突然、子どもを連れてきた夫に腹を立てる信代(安藤サクラ)だったが、体中傷だらけのじゅり(佐々木みゆ)の境遇を察し、面倒をみることに。祖母、初枝(樹木希林)の年金を頼りに暮らすその一家は、風俗のバイトをしている信代の妹・亜紀(松岡茉優)に、新しい家族のじゅりも加わり、貧しいながらも幸せに暮らしていた。だが、ある事件をきっかけに家族の隠された秘密が明らかになっていく。
日雇い仕事の父・治役に、『そして父になる』で庶民的な父親を好演したリリー・フランキー。祖母の初枝役には是枝作品の家族に欠かせない存在である樹木希林。また、妻役の安藤サクラ、妻の妹役の松岡茉優が是枝組初参加となっている。さらに注目すべきはオーディションで選ばれた子役2人、城桧吏と映画初出演となる佐々木みゆ。子役の使い方がうまい是枝監督だけに、どんな演技をみせてくれるかにも注目だ。
監督・脚本・編集をつとめる是枝監督は本作について「きっかけは、死亡通知を出さずに親の年金を不正に貰い続けていた家族が逮捕された事件に触れたことでした。他人から見たら嘘でしかない『死んだと思いたくなかった』と言う家族の言い訳を聞いて、その言葉の背景を想像してみたくなりました。血のつながりについて、社会について、正しさについて、10年くらい自分なりに考えて来たことを全部この作品に込めようと、そんな覚悟で臨んでいます。とはいえ、意気込んでいるわけではありません。ただ、このキャストですから、気合いは入ります。何度目かのお付き合いになる方とも初対面のように、新鮮な気持ちで向き合えればと思っています。オーディションで出会ったふたりの子どもたちが本当に素晴らしく、毎日ワクワクしながら撮影に臨んでいます」とコメント。
またキャスト陣では、リリー・フランキーが「是枝監督とはもう4回目。純粋に嬉しいです。是枝組独特の穏やかで澄んだ空気感の中、本作は社会や人にとって、とても重大なのに、ほんの1日で黙殺されてしまうような出来事にフォーカスを当てていく。是枝監督らしい、いい作品になると感じています」。
松岡が「あの本を読んだ、あの映画を見た。産まれて、育ててもらって、生きてきたすべてのことが正しかったんだと肯定されたような気持ちでした。夢のような顔合わせは現実には思えなかったです」。
樹木が「是枝作品の中に居るのは これで おしまい 。ちょいと ブラブラしすぎる。台本は読みちがえるわ 口は出すわ 悪口は言うわ 都合悪けりゃボケたふりするわ 困ったもんだ」と述べている。
本作は2017年12月15日にクランクイン。1月いっぱいで撮影を終え、2018年6月の全国公開を予定している。なお、今現在タイトルは未定となっている。
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