お漏らししてもチャーミングな名演! 名優が見せる人生の締めくくり

『ロング、ロングバケーション』
(C)2017 AMAZON CONTENT SERVICES LLC
『ロング、ロングバケーション』
(C)2017 AMAZON CONTENT SERVICES LLC

…前編「人生最後の旅をカラリと描いた『ロング、ロングバケーション』」より続く

【ついついママ目線】『ロング、ロングバケーション』後編
子どもの老後に思いをはせて…

ヘレン・ミレンとドナルド・サザーランドという名優2人が共演した『ロング、ロングバケーション』は末期ガンのエラとアルツハイマーが進行しているジョンの老夫婦が人生最後の旅に出るロードムービーだ。彼らの旅は穏やかにすんなりと行くことはなく、次から次へと問題が浮上してくる。

愛してくれれば全てOK? 長澤まさみのオンナ脳を全否定できない

みっともなくはた迷惑なケンカをしたり、ときには愛を語ったりしている彼らは最後の最後まで人生を謳歌しているパワーが感じられる。

名優だけあって不快に感じたり、必要以上に恥ずかしさを感じるさせたりしないのは彼らの真骨頂だ。この年になって焼きもちを焼いて悪態をつくエラも、うっかりお漏らししてしまうジョンもチャーミングに見えるから不思議だ。

そんな彼らが夜に眺めるのはスライドショー。自分たちの歩んできた人生をつらつらと振り返る。良いことばかりとは限らないが、人生の軌跡を確認しながらおさらいをするように。

この老夫婦の姿を見て、他人事ではなくなってきた自分に重ねるのはもちろんだが、子どももいずれ年をとるだろうが人生の終盤はこんな時間を持てるといいと思った。苦楽を共にしてきたパートナーと、気の置けない友だちと、もしくは気ままにひとりきりでもいい。

これは楽しかったな、これは腹が立ったな、これは泣けたな…。人生を振り返りながら重い気持ちにはならず、「なんだかんだあったけど、人生悪いもんじゃなかったな」と軽い心持になれる、そんな締めくくりができますように。(文:入江奈々/ライター)

『ロング、ロングバケーション』は公開中。

入江奈々(いりえ・なな)
兵庫県神戸市出身。都内録音スタジオの映像制作部にて演出助手を経験したのち、出版業界に転身。レンタルビデオ業界誌編集部を経て、フリーランスのライター兼編集者に。さまざまな雑誌や書籍、Webサイトに携わり、映画をメインに幅広い分野で活躍中。

INTERVIEW