「宮沢りえの演技は私たちを見事に納得させた」重度障害者施設を舞台に描く『月』が釜山国際映画祭ジソク部門に選出!

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『月』
(C)2023『月』製作委員会

宮沢りえの演技を釜山映画祭プログラム・ディレクターが絶賛

主演に宮沢りえ、共演にオダギリジョー、磯村勇斗、二階堂ふみを迎え、石井裕也が脚本・監督を手がけた映画『月』。本作が、第28回釜山国際映画祭ジソク部門に出品されることが決定した。

・磯村勇斗「綺麗事を捨て僕たちは向き合わねばならない」…実際の障害者殺傷事件をモチーフに描く衝撃作『月』予告編

深い森の奥にある重度障害者施設。ここで新しく働くことになった堂島洋子(宮沢りえ)は”書けなくなった”元・有名作家だ。彼女を「師匠」と呼ぶ夫の昌平(オダギリジョー)と、ふたりで慎ましい暮らしを営んでいる。施設職員の同僚には作家を目指す陽子(二階堂ふみ)や、絵の好きな⻘年さとくん(磯村勇斗)らがいた。

そしてもうひとつの出会い——洋子と生年月日が一緒の入所者、“きーちゃん”。光の届かない部屋で、ベッドに横たわったまま動かない“きーちゃん”のことを、洋子はどこか他人に思えず親身になっていく。しかしこの職場は決して楽園ではない。洋子は他の職員による入所者への心ない扱いや暴力を目の当たりにする。そんな世の理不尽に誰よりも憤っているのは、さとくんだ。彼の中で増幅する正義感や使命感が、やがて怒りを伴う形で徐々に頭をもたげていく。そして、その日はついにやってくる。

原作は、実際の障害者殺傷事件をモチーフにした辺見庸による同名小説。事件を起こした個人を裁くのではなく、事件を生み出した社会的背景と人間存在の深部に切り込まなければならないと感じたという著者は、〈語られたくない事実〉の内部に潜ることに小説という形で挑戦した。

この問題作を映画化したのは、コロナ禍を生きる親子を描いた『茜色に焼かれる』(21年)、新作『愛にイナズマ』(23年)など、常に新しい境地へ果敢に挑み続ける映画監督・石井裕也。10代の頃から辺見の作品に魅せられてきた彼は、原作を独自に再構成し、渾身のパワーと生々しい血肉の通った破格の表現としてスクリーンに叩きつける。

今回、本作がノミネートされた釜山国際映画祭のジソク部門(Jiseok部門)は、2017年から設定されていたキム・ジソク賞を独立させ昨年新設された部門だ。新人をのぞけば、唯一のコンペティション部門となる。

本年は、ノミネートされた9本の作品の中から最大2作品にキム・ジソク賞が送られる。過去には『羊の木』(17年)『義足のボクサー』(21年)がキム・ジソク賞を受賞している。日本からは石井裕也監督の渡航が決定しており、授賞式は10月13日を予定している。

映画祭のプログラム・ディレクターを務めるナム・ドンチョルは、「この映画は、私たちの”正常と異常の間の偏見”に疑問を投げかけている。それは強く勇敢な試みであり、特に宮沢りえの演技は私たちを見事に納得させた」と本作を絶賛。期待値と評価の高さがうかがえる。

『月』は10月13日より全国公開。

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