Huluオリジナル『神の雫/Drops of God』プロデューサー/クラウス・ジマーマン インタビュー
国内外で人気を博し、ワインブームを巻き起こしたベストセラー漫画「神の雫」。連載開始から来年で20周年を迎えるなか、満を持して国際連続ドラマとして生まれ変わった。『神の雫/Drops of God』と題して9月15日よりHuluで独占配信中の本作は、フランスと日本、イタリアを舞台に壮大なスケールで展開。すでに配信がスタートしている海外では、高い評価を得ている。
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フランスでもヒットしていた原作漫画「神の雫」、最初は映像化は無理だと思っていた
そんな話題作で主演を務めるのは、海外ドラマ初主演となる俳優の山下智久。近年は世界で目覚ましい活躍を見せており、本作では聡明なワイン評論家・遠峰一青を見事に演じている。また、本作は一青のライバルである原作の主人公・神咲雫をフランス人女性に置き換えるという大胆なアレンジにも挑戦。新たな世界観を作り上げ、大きな反響を呼んでいる。そこで、製作総指揮を務めたプロデューサーのクラウス・ジマーマンに、作品誕生までの舞台裏や山下の魅力などについて語ってもらった。
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Q:「神の雫」の原作を知ったきっかけから教えてください。
A:最初に読んだのは、2012年くらい。フランスでもかなりヒットして話題になっていましたし、ワインを題材にした漫画というのはすごく珍しいと思いました。
Q:漫画を読まれたときは、どういう印象を持ちましたか?
A:まずは、「日本人がワインについて漫画を描くなんて!」と非常に驚きましたね。と同時に、「これを映像化するのは無理だろうな」とも感じました。それでも、5年ほど経ったときにテレビシリーズへの興味が湧いてきてアプローチを始めることに。とはいえ、その時点では、自分のなかでも映像化か可能かどうかはっきりと答えが出ていない状態でした。
Q:難しいと感じていたにもかかわらず、なぜドラマ化しようと思われたのでしょうか。
A:これまでのキャリアにおいて、国際的な合作にいくつも携わってきたので、この作品に関しては大きなチャレンジになるだろうというのはわかっていました。特に、日本とフランスの合作は初めてでしたし、「神の雫」のように五感に訴えるような作品にも関わったことがありませんでしたから。それでも、作家たちと数ヵ月にわたってブレインストーミングを行うなかで、こういう形ならできるのではないかという案にたどり着きました。
Q:その過程では、どんなことを意識していましたか?
A:私たちにとって一番重要だったのは、どうしたら日本とフランスの話をうまく伝えられるかと、どれだけ原作の持つ精神に忠実でいられるか。原作に敬意を払いたかったので、違いすぎるものを作りたくないという気持ちがありました。
Q:そんななかで、原作の主人公である神咲雫をフランス人女性するというのはかなり大胆な変更だったのではないかなと。
A:当初は日本人とフランス人の男性2人という設定で進めていましたが、だいぶ制作が進んだ段階で出た発想でした。いろんな準備も進み、キャスティングも始まる直前というくらい間近のことだったので本当に突然の変更でしたね。最近はだいぶ女性も増えましたが、ワインの世界というのは伝統的に見ても男性社会。だからこそ、2人のうち1人を“完全なアウトサイダー”にするのはいいアイデアではないかなと思ったんです。実際、原作者の方にも面白がっていただくことができました。
「山下智久さんはオーディションで決定」決め手は説得力ある演技
Q:今回、遠峰一青役に山下智久さんをキャスティングされたのはどういった経緯ですか?
A:山下さんはオーディションで決まったのですが、役に対する彼の視点というのが私たちの求めているものでしたし、非常に説得力のある演技を見せてくださったのでお願いすることにしました。
Q:実際に山下さんとお仕事をされてみて、いかがでしたか?
A:山下さんは勤勉で、キャラクターに対する提案もいろいろとしてくださったので、プロとしての仕事ぶりを見せてくれました。「日本でも、同世代のなかでは一番素晴らしい役者なのではないか」と思っているほどです。それでいてすごく謙虚で、完璧を求めるためなら何でもしてくれる方なので、こういう役者はいつでもいてほしいなと思いました。
彼がいかに完璧主義者かというのがわかるエピソードを1つお話すると、役により近づくために現場でもずっとワインの知識を学び続け、撮影が終わる頃には誰よりもワインに詳しくなっていたというのがあります。その姿は、本当に素晴らしかったです。
Q:では、山下さんの素顔や魅力がわかるようなエピソードといえば?
A:山下さんは優しくて、みんなに対して気配りができる方。日本で撮影をしていた際には、何をどうしていいかわからない海外から来た私たちのことをすごく気遣ってくれました。また、冒険心もあるので、フランスで長期間撮影していたときには、好奇心を持っていろんなところを訪れていたようです。
「大スター」と言われるような人は、ときに扱いが難しいものですが、彼の場合はみんなと同じように接してほしいという感覚の持ち主。おかげで撮影もスムーズに行うことができました。山下さんのことについては、本当にいいことしか話せないんです。
Q:現場では、どういったやりとりをされていたのでしょうか。
A:つねにいろんな議論が交わされていましたが、今回はワインという題材をどのように映像で表現するかということが中心となっていました。そんななかで、山下さんは一青として完璧な提案をいくつもしてくれたので、そのおかげで作品に深みをもたらしてくれたと感じています。
Q:作品の製作にあたって、特にこだわったところはありますか?
A:今回のストーリーにおいて気を付けていたのは、ワインに対して間違った情報を入れたくないということ。そのために、専門家の方々に何人も入っていただき、アドバイスを受けて作っていきました。一方、ワインに興味がない方にも面白いと思ってもらえる普遍的な作品にもしたかったので、バランスを取るのは難しかったです。
あとは、日本とフランスという2つの文化を描いているので、そこも正確に伝えたいという思いがありました。特にキャストのなかにも日本の方は多かったので、“フランス人が思う日本”にならないように、みなさんのアドバイスを受けながら正しい日本の表現や言葉、習慣を取り入れています。そうやって2つの文化の似ている点や異なる点というのをストーリーのなかに盛り込みました。
Q:撮影に関しては、2021年8月からというコロナ禍真っ只中で苦労されたことも多かったのではないかなと思います。
A:非常に厳しかったですね。たとえば、日本で撮影を行おうとした際、当時はまだ海外から人が入れない時期だったので、撮影を始められるまで待たなければいけないというのがありました。ほかにもイタリアをはじめ、世界中を回っていましたが、パンデミックの間の撮影というのは本当に大変な試み。特に今回は、四季をすごく意識していた作品でしたが、自然は待ってくれませんからね。そういう部分でも難しいことがたくさんありました。
Q:今回、日本で撮影してみて印象に残っていることは?
A:日本というのは、他の国とは全然違うと思いますが、驚いたことの1つは、みなさんが非常に礼儀正しいこと。しかも、フレンドリーで優しいので、これは世界においてもなかなかないことだと思います。
Q:そんななか、今後日本の監督や俳優で一緒に仕事をしてみたい方もいるのではないかなと思うのですが。
A:実は、いま日本とのプロジェクトを2つ抱えていることもあって、名前を言えない状況なんですよ……。でも、今回の経験で日本に対する好奇心も増しているので、どんどん日本とコラボレーションをしていきたい気持ちが高まっています。
Q:ご自身が日本から影響を受けているものがあれば、お聞かせください。
A:世界中の映画ファンと同じで、子どもの頃から黒澤明監督の映画を見て育ちました。あとは、北野武監督や是枝裕和監督の作品も大好きです。これはまだ先の話になるとは思いますが、村上春樹さんの作品をいつか映像化できたらいいなと考えています。
Q:本作は批評家にも非常に高く評価されていますが、成功した理由を改めて分析するとしたら?
A:要因は2つあると考えています。まず、テレビシリーズとしてはこれまでにないようなユニークで、オリジナリティのある作品になったということです。そして、もう1つは、暖色系の色合いを意識的に使っているのですが、それによって原作の持つ緊張感と対比した美しさを出せたのではないかなと。各地の素晴らしいロケーションも堪能していただけるので、ワイン好きはもちろん、そうではない方からも非常に面白かったという感想をいただきました。本作は、男女ともに幅広く楽しめる作品になっていると思います。
Q:それでは最後に、日本の観客に向けて、メッセージをお願いします。
A:やはり一番の見どころは、最終回。8時間見ていただいた方には、非常に満足度の高いエンディングになっていますし、意義のある時間だと感じていただけるはずです。(text:志村昌美)
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