6月公開作の1位は『万引き家族』。カンヌ映画祭のパルムドール受賞のニュースは連日テレビがニュースやワイドショーなどで取り上げ、新聞では一般紙やスポーツ紙も報道し、話題性を大きく盛り上げた。邦画にしては珍しく先行上映を行い、公開後17日間の興収は25.2億円(先行上映分を含む)。是枝裕和監督最大のヒット作『そして父になる』(最終興収32億円)を上回るのは間違いない。
・『万引き家族』だけは別! パルムドールはヒットに繋がらないが是枝作品は例外
映画宣伝の基本は「認知度」(作品を知っているか)をまず高め、その後「意欲度」(作品を見たいか)を高めること。連日の報道で一気に両方が高まり、観客が映画館に足を運んだようだ。
公開記念舞台挨拶を公開2日目の6月9日、大ヒット舞台挨拶を14日に行い、是枝監督、リリー・フランキー、安藤サクラ、松岡茉優らが出席。公開中もメディア露出に力を入れたことで、興収を伸ばしている。昨年の邦画実写年間ナンバーワンヒットの『銀魂』は38.4億円。このままのペースで興収を伸ばせば、興収40億円を超えて邦画実写年間1位の可能性も見えてくる。
2位は『デッドプール2』。公開後24日間の興収は15.8億円。前作(最終興収20.4億円)は26日間で18億円だったで、本作は最終的に17〜18億円になりそうだ。公開直前の5月29日には来日したライアン・レイノルズや映画に出演した忽那汐里が出席したイベントを実施。注目度アップに貢献した。公開日は前作と同じ6月1日。競合作品が多い夏休みシーズンの7〜8月を避け、多くのシネコンで入場料金が1100円になるファーストデイ(毎月1日)を公開日に設定して動員に弾みをつけた。
3位は『50回目のファースト・キス』。アダム・サンドラーとドリュー・バリモアが共演した04年の同名作品を山田孝之と長澤まさみの共演でリメイクした。5月22日にはレッドカーペットセレモニー、公開2日目の6月2日には公開記念舞台挨拶、11日には公開御礼舞台挨拶を行い、福田雄一監督、山田、長澤らが出席しPRに務めた。
配給を担当したソニー・ピクチャーズでは日本テレビなどとともに製作にもあたった。ハリウッドの大手映画会社で邦画製作に熱心なのは『るろうに剣心』『銀魂』などをヒットさせたワーナー・ブラザースだが、ソニ ー・ピクチャーズでも力を入れ始めている。同社製作の邦画では昨年の『斉木楠雄のΨ難』(10億円)に続くヒットとなった。
なお、シリーズ6作連続で最高興収記録を更新した『名探偵コナン ゼロの執行人』は6月に入ってからも興収を伸ばし、6月24日時点で83.6億円を記録している。(文:相良智弘/フリーライター)
[6月公開作ランキング]
1位『万引き家族』25.2億円
2位『デッドプール2』15.8億円
3位『50回目のファースト・キス』9億円
(6月24日時点。ムビコレ調べ)
相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。
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