坂本龍一が韓国映画で構築した新たな音世界とは?

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坂本龍一
坂本龍一

【映画を聴く】『天命の城』前編
古くからのファンも喜ぶ旺盛な活動意欲

『天命の城』が日本公開された翌日となる6月23日、坂本龍一は細野晴臣のロンドン公演にサプライズ・ゲストとして高橋幸宏とともに登場。1曲のみながら久々にYMOのメンバーが集結しての演奏が実現した。この日の細野のライヴは、坂本がキュレーターを務めるイベント「MODE」の一環として、ロンドンのバービカン・センターで行なわれたものだ。

「0.1秒単位までオーダー通りに仕上げていく」坂本龍一が語る仕事への姿勢

2015年に病気療養から復帰した坂本龍一にとって、『天命の城』は『母と暮せば』『レヴェナント:蘇りし者』『怒り』に次ぐ4作目の映画音楽。このほかにも「タルコフスキー映画の架空のサウンドトラック」をコンセプトとしたソロ・アルバム『async』とそのリミックス集『ASYNC REMODELS』、ドキュメンタリー映画『Ryuichi Sakamoto: CODA』とライヴ映画『PERFORMANCE IN NEW YORK: async』の劇場公開〜Blu-ray & DVD化、自身の活動をアーカイヴする『Year Book』シリーズのリリースなど、療養前となんら変わらない旺盛な創作ペースを取り戻しつつある。しばらくは映画とソロ活動に徹しているように見えたが、ここへきてYMOの2人との活動再開の兆しも見え始めたのだから、古くからのファンには嬉しさしかないだろう。

映画音楽については、近年はちょうど韓国や中国などアジア圏の作品に関心が高まっていたらしく、本作のオファーはイ・ビョンホン主演の時代劇と聞いてすぐに引き受けたという。先立って本サイトに掲載されたインタビューを読むと、韓国映画に惹かれる理由として「アクション中心のエンターテインメント作品であっても、政治の腐敗や社会問題が必ず織り込まれている」ことを挙げている。

時代劇ということもあり、当初は韓国の民族楽器などを多用したトラディショナルな音楽を想定していたというが、ファン・ドンヒョク監督の意向により斬新さを併せ持ったモダンな音楽へと方向転換。結果として、ここ数年の坂本龍一の作風のベースとも言えるミニマルで“間”を重んじたサウンドの中にエモーショナルな旋律が見え隠れする、『母と暮せば』とも『レヴェナント』とも『怒り』とも違う音世界を構築している(後編へ続く…)。

後編「坂本龍一の近作のなかでは最も“映画音楽らしい映画音楽”が堪能できる『天命の城』」に続く…

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