全国拡大公開に一役買った映画会社とは?
6月23日から東京都内2館で公開され、SNSで口コミ人気が広がっているインディーズ映画『カメラを止めるな!』。8月3日からはTOHOシネマズ7館(日比谷、新宿、日本橋、六本木ヒルズ、名古屋ベイシティ、モレラ岐阜、なんば)が加わり、全国16館での拡大公開がスタートした。特にTOHOシネマズの人気館である日比谷ではスクリーン12(座席数489)、新宿ではスクリーン7(座席数407)と各館の最大級の座席数を要するスクリーンで上映され、満席の回が続出した。
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8月4、5日の週末は16館で興行収入5200万円、動員3万2000人を記録。興行通信社が発表する週末興行ランキングで10位となり、初めてトップ10入りを果たした。トップ10内の映画は公開館数300館以上がほとんどなので、わずか16館での10位は異例のことだ。
公開にあたっては、製作元のENBUが配給も担当。6月23日公開の新宿K’s cinemaと池袋シネマ・ロサを皮切りに、7月6日からイオンシネマ大宮、13日からイオンシネマ京都桂川、14日から渋谷ユーロスペース、川崎チネチッタなど徐々に上映館を増やしてきた。8月3日からの全国拡大公開に一役買ったのがアスミック・エースだ。
K’s cinemaで映画を見たアスミック・エースのスタッフが「全国の映画館で上映すべきだ」と社内で声を上げ、会社として応援することを決定。公開2週目にはENBUへ共同配給を申し出た。6月末時点でENBUが既に決めていた13館以外への劇場ブッキングをアスミック・エースが担当。TOHOシネマズをはじめとしたシネコン法人を中心に営業を行い、9月まで124館での上映を決めた。また同社では7月下旬以降の宣伝を担当。メディアからの取材や監督への取材依頼の調整、上映予定劇場でのインシアター宣伝などを行った。
インディーズ映画が一部の映画ファンの間で盛り上がり、その後映画を作った監督が全国公開作品に抜擢されて世に出るケースは多い。だが、インディーズ映画自体が全国で上映されることは珍しい。『カメラを止めるな!』は大学生から30代の流行に敏感な層(SNSと親和性が高い層)が中心となって劇場に足を運んでおり、リピーターが多いのも特徴。未見の友人を連れてもう一度一緒に見て、終わった後に映画の感想を語り合うようだ。今後、上映館数は増えていくので快進撃はまだまだ続きそうだ。(文:相良智弘/フリーライター)
相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。
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