【映画を聴く】『SUNNY 強い気持ち・強い愛』前編
90年代の空気感やカルチャーを伸び伸びと描写
ちょうど高校の同窓会に出席して、26年ぶりの再会に年甲斐もなくウルウルした直後だったので、『SUNNY 強い気持ち・強い愛』は始めから終わりまで落涙の連続だった。
『モテキ』の大根仁監督が、かねてよりフェイバリットに挙げていた韓国映画『サニー 永遠の仲間たち』をリメイク、と聞いた時点でいい結果しか予想していなかったけれど、期待の斜め上をいくキャスティング、時代設定、楽曲のチョイスで、どこから見てもオリジナル作の熱量に少しも引けを取らない青春ミュージカル映画に仕上がっている。使用される楽曲は、小室哲哉作品を中心としたミドル90sのベストヒット集と言っていいような豪華ラインナップだ。
・『タリーと私の秘密の時間』身体を張ったシャーリーズ・セロンの演技と共に味わいたい雄弁な音楽演出
本作は、2018年現在と1990年代を行き来する構成になっているが、過去をあえて「1990年代」とあいまいに設定しているところがまずうまい。これにより、時代設定の矛盾を細かく指摘するウルサ方の追求を回避。90年代を印象づける空気感やカルチャーを伸び伸びと描写している。
実際、おもな楽曲のリリース時期を見ると、安室奈美恵「SWEET 19 BLUES」は1996年8月、同じく「Don’t wanna cry」は1996年3月、小沢健二「強い気持ち・強い愛」は1995年2月、久保田利伸「LA・LA・LA LOVE SONG」は1996年5月、hitomi「CANDY GIRL」は1995年4月、trf「survival dAnce は」1994年5月、同じく「EZ DO DANCE」は1993年6月、Chara「やさしい気持ち」は1997年4月と、微妙にばらつきがある。初出が76年の森田童子「ぼくたちの失敗」が、93年のドラマ『高校教師』に使用されてリバイバルヒットしたことから「90年代の曲」として扱われているのも面白い。また、リアルTKファミリーだった本作のヒロイン、篠原涼子のブレイクのきっかけとなったシングル「恋しさと せつなさと 心強さと」は1994年7月のリリースである。
音楽面では80年代の英米ポップスのヒット曲を中心に使っていたオリジナル版を大胆に改変するいっぽう、脚本やシチュエーション、映像的なルックについてはほぼ完コピと言っていいレベルでオリジナルを踏襲しているのが本作の特徴だ。そのあたりに大根監督のオリジナル版への深い愛情がうかがえる。
・後編「これはもう必然! 平成最後の年に引退する安室奈美恵と小室哲哉とも重なる〜」に続く
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