『冬のソナタ』がNHK-BSで放送されたのをきっかけに韓流ブームに火がついたのが2003年。04年には『冬ソナ』がNHK総合で放送され、視聴率が20%超を記録してブームの裾野が広がった。映画界では00年に『シュリ』が興収18.5億円、01年に『JSA』が11.6億円を記録して韓国映画が注目を集めていたが、韓流ブームで人気が加速。04年に『僕の彼女を紹介します』が20億円、05年に『四月の雪』が27.5億円、『私の頭の中の消しゴム』が30億円と大ヒットした。だが、これをピークにその後は10億円超えのヒット作は生まれず、韓国映画の人気は下火となる。同じ頃からK-POPブームも起きたが、11年のNHK紅白歌合戦に東方神起、KARA、少女時代の3組、17年にTWICEが出場。ブームが続いているのとは対照的だ。
・弾圧を恐れ秘密裏に進められた脚色作業/『1987、ある闘いの真実』チャン・ジュナン監督インタビュー
「韓国エンタメのファンといっても、ドラマ、音楽、映画では異なります」と語るのは映画会社ツインの栃木真理子氏だ。ツインは数多くのアジア映画を配給しており、『新感染ファイナル・エキスプレス』『バーフバリ 王の凱旋』などのヒットで知られる。昨年、韓国のCJ E&Mと新作及びカタログライブラリー作品の包括契約を締結し、CJエンタテインメント作品の配給を新たに始めた。
韓国映画の公開本数を見ると、05年は61本、17年は42本(外国映画輸入配給協会発表)。一時の人気はなくなったといえ今も公開本数は多く、アメリカ(193本)、イギリス(43本)に次ぐ本数だ。昨年の『新感染』がスマッシュヒットしたことで「新しい観客を呼びこむ可能性が見えました」。『新感染』の宣伝では「何があっても、守り抜け!」「世界大喝采&大熱狂!乗り遅れるな!」とキャッチコピーを付け、韓国映画を押し出さないことで新規客を掘り起こした。
ツインで今期待を寄せるのが9月8日公開『1987、ある闘いの真実』だ。1987年1月、全斗煥大統領による軍事政権下の韓国で、ソウル大学生の拷問死事件をきっかけに起きた一連の出来事を群像劇で描く。80年の光州事件を題材にした『タクシー運転手』(クロックワークス配給、4月公開)が日本でスマッシュヒットしたこともあり、『1987』へのマスコミの注目度は高く、試写会は連日にぎわった。
「事件当時、ソウルで取材した新聞記者も数多く試写会に来ていただきました。来日したチャン・ジュナン監督への取材申し込みも多かったです」。シネマート新宿がメイン館で、全国50館で上映予定(8月31日時点)。「弊社の劇場営業担当者へ地方の映画館から『上映したい』という電話を多くいただきました。こちらから営業する前に電話をいただくのは異例のことです」。
さらにツインでは、イ・ビョンホンが落ちぶれたボクサーに扮したヒューマンドラマ『それだけが、僕の世界』(12月28日公開)、イ・チャンドン監督が村上春樹の短編小説『納屋を焼く』を映画化した『バーニングBURNING(原題)』(19年公開)などが控える。CJエンタテインメント作品を新たに扱い始めたことで、配給する韓国映画が増えており、17年は4本、18年は13本に急増している。今後も韓国映画をはじめ、アジア映画のファンを増やすことに注力していく考えだ。(文:相良智弘/フリーライター)
相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。
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