9月には米国でヒットした2本のホラー映画が公開される。9月21日公開『死霊館のシスター』は、『死霊館』シリーズのスピンオフ作品。米国では9月7日に公開され初日3日間で5380万ドルの興収を上げ、シリーズ最高のスタートを切っている。9月28日公開『クワイエット・プレイス』は、米国で4月に公開され、8週連続週末興行ランキングTOP10入り。『レディ・プレイヤー1』『オーシャンズ8』といった話題作を上回る興収1億8800万ドル(約210億円)を記録した。
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『死霊館のシスター』のプロデューサーがジェームズ・ワン、『クワイエット・プレイス』のプロデューサーがマイケル・ベイ。この2人がホラー映画を盛り上げるヒットメーカーだ。
ハリウッドでは毎年ホラー映画が公開され、意外なヒット作が生まれている。日本の観客はファミリー層が中心で、少子高齢化もあり10代20代の観客が減っている。逆に米国では10代20代の観客が多いので、この層を狙ってホラー映画が作られる。アクション大作となると製作費に1億ドル以上を費やすこともある中、ホラー映画は1000万〜2000万ドル程度の低予算で製作できる。目標とする興行収入も低いため、監督やプロデューサーはアイデア勝負で作りやすいという背景もある。
ジェームズ・ワンはリー・ワネルと共同で脚本を書き、監督も務めた『ソウ』(04年)で脚光を浴びた。その後『ソウ』シリーズではエグゼクティブ・プロデューサーを務めるとともに、怪奇現象に襲われた一家を描く『インシディアス』(10年)をワネルと共に作り上げ(ワンが監督、ワネルが脚本)、2作目(13年)も監督。13年には『死霊館』も監督する。この作品は実在する超常現象研究家のウォーレン夫妻が主人公。以降、同作に登場した呪いの人形アナベルを主人公に据えたスピンオフ映画『アナベル 死霊館の人形』(14年)、シリーズ2作目『死霊館 エンフィールド事件』(16年)、『アナベル』のプリクエル(前日談)となる『アナベル 死霊人形の誕生』(17年)を製作。『死霊館のシスター』は『死霊館 エンフィールド事件』に登場した邪悪な修道女を主人公にしている。
マイケル・ベイは『アルマゲドン』『トランスフォーマー』シリーズなどアクション大作を数多く監督しているが、2001年にプロデューサー2人と製作会社プラチナム・デューンを設立。『テキサス・チェーンソー』(03年)を皮切りに、『悪魔の棲む家』(05年)、『13日の金曜日』(09年)、『エルム街の悪夢』(10年)など名作ホラーのリイクや、「1年に一晩だけ殺人を含むすべての犯罪が合法化される」世界を舞台にした異色スリラー『パージ』シリーズなどを製作してきた。
『クワイエット・プレイス』はハリウッドの情報サイト「The Tracking Board」による17年の優れた脚本トップ10に選出された。ホラーやスリラーを数多く手掛けてきた製作会社だからこそ「この題材はいける」と脚本に目を付けたようだ。本作は20年に続編を公開すると発表されている。(文:相良智弘/フリーライター)
相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。
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