昨年の第30回東京国際映画祭「アジアの未来」部門で、日本人監督初となるグランプリにあたる「作品賞」と監督賞にあたる「国際交流基金アジアセンター特別賞」の2冠に輝いた『僕の帰る場所』。この映画の記者会見が9月20日に日本外国特派員協会で行われ、藤元明緒監督とキャストのケイン・ミャッ・トゥさん、渡邉一孝プロデューサーが登壇した。
本作は「移民」をテーマに、ミャンマーでの民主化の流れや、在日外国人家族を取り巻く社会を背景に描いた作品。東京の小さなアパートに住む母のケインと幼い2人の兄弟。入国管理局に捕まった夫に代わり、ケインは1人で家族を支えていた。日本で育ち、母国語を話せない子どもたちに対し、ケインは慣れない日本語で一生懸命に愛情を注ぐが、父に会えないストレスで兄弟はいつもケンカばかり。ケインはこれからの生活に不安を抱き、ミャンマーに帰りたいという思いを募らせてゆく。
会見では、本作が日緬(日本とミャンマー)合作映画であることから「なぜミャンマーとの共同制作を考えたのか」という質問が。これに渡邉は「本作の共同プロデューサーで出演もしている俳優・來河侑希より、ミャンマーで映画を撮らないかと話があった。渡航経験もなく、ミャンマーのことを何も知らなかったので、インターネットや本などで調べ始めると、日本人がアウン・サン・スー・チー女史や軍事政権については少し知っているが、どういう人たちがどんな場所で何を食べ何を話しているか、生活のことは知らないことに気がついた。映画なら、観客が感情移入する中で、それらの多くをスクリーンを通じて発見していく作品をつくることができる」と考えたそうで、「資金もなく、映画プロデュースもしたことがなかったが、国際共同制作企画の監督募集をした。その中で、唯一脚本まで書き上げてきたのが藤元監督。ミャンマーを短時間で調べ世界観をつくり上げたことに感心し、一緒に映画をつくることを決めた。結果、この映画のために会社とNPOを立て、多くの方々に支えられながら、製作委員会をつくらない協賛と借金のみによる一社単独責任の体制を取り、5年の歳月をかけることになった」と誕生秘話について語った。
また、本作の魅力については「監督は日本人だが、国籍も文化も年齢も越えて、ミャンマー人の家族、子どもに共感し、作品の根本を見出したことが素晴しいと感じている。ファミリーレストランやコンビニに行けば外国の方々を多く目にしたりするが、東南アジアに限らず、日本人が外国人に感情移入していくことが圧倒的に少ない。映画館に行けば、そのゼロの体験がイチになる可能性がある」と話した。
母親役を演じたケインさんは、子役であり実の息子たちでもあるカウンくん、テッくんが現在11歳と7歳(撮影当時7歳と3歳)となり、2人とも映画が好きで機会があれば、また挑戦してみたいと思っていることを明かしていた。
『僕の帰る場所』は10月6日よりポレポレ東中野ほかにて全国順次公開となる。当日は初日舞台挨拶も予定しており、本日の登壇者に加え、主人公家族の兄弟カウン・ミャ ッ・トゥ、テッ・ミャッ・ナインらも登壇予定となっている。
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