(…前編「『障害のある恋ができますか?』と問題提起〜」より続く
【ついついママ目線】『パーフェクトワールド〜』後編
我が子の幸せを一番に願うのが親心
身体障がい者となった高校時代の初恋相手・樹と再会し、彼の懸命に生きる姿を見たつぐみが恋心を募らせていく『パーフェクトワールド』。
つぐみの親は反対し、樹に別れてくれるように頼む。無理に別れさせてもしょうがないと思う反面、娘が困難な道を敢えて進んでいく姿をただ手をこまねいて傍観しているだけではいられなくなる親の気持ちもわかる。
気持ちの面だけでなく、身体障がい者を支えるということは体力的にも負担がかかることだろう。娘の選んだ道だからと自分をなだめつつ、今は娘も恋に落ちたばかりで気持ちが舞い上がっているだろうけど、そのうち落ち着いたら後悔するんじゃないだろうか、無理しすぎて娘も体を壊したら……親としてはさまざまな不安が去来して冷静でいられなくなっても仕方がない。
つぐみの親の親心も、親なら誰しも全面的には否定できないと思うが、体に障がいを負った樹の方の親の気持ちも否めないものがあった。
樹の母はつぐみに告げる、誰かに苦労を負わせても樹に幸せになって欲しい、と。人に迷惑をかけない人間に育って欲しいとはよく親が言う言葉だが、それとはまた次元の違う話。ひとりで生きていくのは不幸だと決めつけるわけじゃない。
ただ、樹のように体に障がいを負って、心も折れそうになりながら必死でひとりで頑張っている子どもの姿を見たら、誰か側にいて一緒に踏ん張ってくれる人がいたら、と願ってしまうだろう。
親が若くパワーがあるうちは支えてやることもできるが、親はいづれ年老いていく。それに親という立場じゃなく、同じ目線でお互いに支え合う存在がいれば幸せなことなんじゃないかと思うことだろう。問題を抱える恋人たちの、どちらの立場の親の親心も否定できないものを感じた。
親とは自分の子が一番可愛くて、なんとしてでも幸せになってほしいと願わずにいられないものだ。(文:入江奈々/ライター)
『パーフェクトワールド 君といる奇跡』は全国公開中。
入江奈々(いりえ・なな)
兵庫県神戸市出身。都内録音スタジオの映像制作部にて演出助手を経験したのち、出版業界に転身。レンタルビデオ業界誌編集部を経て、フリーランスのライター兼編集者に。さまざまな雑誌や書籍、Webサイトに携わり、映画をメインに幅広い分野で活躍中。
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