【週末シネマ】『日日是好日』
1人の女性の20数年間を、お茶の稽古を通して丁寧に描いていく『日日是好日』。20歳の女子大生が、母の勧めでご近所の茶道教室に通い始め、決まり事を学びながら、五感で二十四節気という時の流れや生きていくうえでの喜びや悲しみを全身に染み込ませていく成長物語だ。
・[動画]樹木曰く“今の時代に必要な作品”/映画『日日是好日』樹木希林インタビュー
原作は森下典子のエッセイ「日日是好日『お茶』が教えてくれた15のしあわせ」で、『まほろ駅前』シリーズや『セトウツミ』の大森立嗣監督のもと、ヒロイン・典子を黒木華、典子と一緒にお茶を習ういとこの美智子を多部未華子が演じ、9月15日に亡くなった樹木希林が茶道の師・武田先生役で出演している。
始まりは1990年代。両親と弟と暮らす典子は真面目な性格だが、やりたいことが見つからないまま大学生活を送っていた。お茶を習うことも自ら進んでではなかったし、習い始めてすぐに熱中するというわけでもない。だが、強制されるわけでもないのに週に一度教室に通うことは彼女の生活の一部となる。典子の家はごく普通のサラリーマン家庭で、家族仲も良い。彼らの他愛ない平凡なやりとりはとてもリアルで、こうした描写の丁寧さがあってこそ、茶道教室という非日常の空間も際立つ。
身体の隅々にまで神経を行き渡らせる所作を、まずは形から入ることで身につけろと武田先生は言う。近所のおばさんから師となった武田先生から教わる作法の1つ1つ、かけてもらう言葉の数々が積み重なり、うまくいかない就職活動、恋愛、思いがけない別れなど、淡々とした日々の中での典子が経験する出来事への間接的な応えになっている。
日日是好日とは禅語の1つ。額面通りに受け取れば「毎日がよい日」という意味だ。そこからさらに踏み込んだ解釈は、映画の中で武田先生が教えてくれる。「こうして毎年、同じことができることが幸せなんだって」というのは至言だ。同時に、一度として全く同じことはあり得ない、一期一会の精神も映画は描く。
『日日是好日』は10月13日より公開。
冨永由紀(とみなが・ゆき)
幼少期を東京とパリで過ごし、日本の大学卒業後はパリに留学。毎日映画を見て過ごす。帰国後、映画雑誌編集部を経てフリーに。雑誌「婦人画報」「FLIX」、Web媒体などでレビュー、インタビューを執筆。好きな映画や俳優がしょっちゅう変わる浮気性。
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