追悼/坂本龍一、ジェーン・バーキン、イ・ソンギュンら2023年に亡くなった映画人を偲ぶ
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ウィリアム・フリードキン、高橋幸宏、中島貞夫…多くの才能がこの世を去る
時代を築いた象徴するスター、美しいメロディを作り出した音楽家、かけがえのない名優、心に響く名作を作り上げた監督、脚本家。今年も多くの才能が惜しまれながらこの世を去った。
・母娘の距離感、近づき深まる想いを映し出す『ジェーンとシャルロット』
ジュリアン・サンズ
1月13日/享年65歳
1980年代に『キリング・フィールド』(85年)や『眺めのいい部屋』(87年)に出演し、美形英国俳優として人気を博したジュリアン・サンズは今年1月13日(現地時間)、ハイキングに出かけたカリフォルニア州サンガブリエル山脈のボールディ山で消息を絶った。60代になってもスイスのアルプスで標高4500メートル超の山に挑戦するなど、登山が趣味だったサンズは65歳の誕生日(1月4日)から10日足らずで行方不明になり、捜索が続けられたが、6月24日に現地で発見された遺体が身元確認の結果、サンズであることが確定した。
ハリウッド大作からヨーロッパ映画まで幅広く出演し、近年は『ドラゴン・タトゥーの女』(11年)、『異端の鳥』(20年)などに出演していた。
ティナ・ターナー
5月24日/享年83歳
「愛の魔力」、『マッドマックス/サンダードーム』(85年)の主題歌「ウィ・ドント・ニード・アナザー・ヒーロー」などのヒット曲で知られ、“ロックンロールの女王”と呼ばれたティナ・ターナーはスイスの自宅で長い闘病の末に亡くなった。『マッドマックス/サンダードーム』のほか、アーノルド・シュワルツェネッガー主演の『ラスト・アクション・ヒーロー』(93年)にも出演している。1993年には波乱の半生を綴った自伝の映画化『TINA ティナ』も作られた。
ヘルムート・バーガー
5月18日/享年78歳
1970年代にイタリア映画の巨匠、ルキノ・ヴィスコンティ監督の作品で活躍したヘルムート・バーガーはオーストリアのザルツブルクで急逝した。オーストリア出身で、イタリアの大学在学中にヴィスコンティに見出されて映画デビューし、バイセクシャルだった彼はヴィスコンティと暮らし始め、監督と俳優として『地獄に堕ちた勇者ども』(70年)、『ルートヴィヒ』(80年)、『家族の肖像』(78年)を手がけた。1976年のヴィスコンティ逝去後はキャリアが低迷したが、『ゴッドファーザーPART III』(91年)、『SAINT LAURENT/サンローラン』(15年)などに出演した。
・[動画]ヴィスコンティ渾身の後期最高傑作/映画『家族の肖像 デジタル完全版』予告篇
アラン・アーキン
6月29日/享年89歳
『リトル・ミス・サンシャイン』(06年)でアカデミー助演男優賞を受賞したアラン・アーキンはカリフォルニア州の自宅で亡くなった。長年の心臓疾患が原因という。
1960年代にニューヨークのブロードウェイで活躍し、トニー賞など数多く受賞した後、映画デビュー作の『アメリカ上陸作戦』(66年)でアカデミー主演男優賞候補になる。コメディ、ドラマで活躍し、近年はアカデミー助演男優賞候補となった『アルゴ』(12年)、『ダンボ』(19年)などに出演。ゴールデングローブ賞受賞のNetflixシリーズ『コミンスキー・メソッド』でマイケル・ダグラスとダブル主演した。
・[動画]『アルゴ』アラン・アーキン&ジョン・グッドマン インタビュー
ジェーン・バーキン
7月16日/享年76歳
フランス映画を中心に活躍し、エルメスの定番バッグ「バーキン」の由来にもなったイギリス出身のジェーン・バーキンはパリの自宅で死去した。1960年代からパートナーでマルチアーティストのセルジュ・ゲンズブールと音楽や映画でコラボレーションし、センセーショナルな作品を次々発表。ゲンズブールとの間に生まれた娘シャルロットも母と同じ道に進んだ。ゲンズブールと破局後にパートナーとなったジャック・ドワイヨン、アニエス・ヴァルダやジャン・リュック・ゴダール、ジャック・リヴェットなど多くの名匠の作品に出演。近年は白血病や脳卒中で闘病しながら音楽を中心に活動していた。2021年にシャルロットが手がけたドキュメンタリー『ジェーンとシャルロット』が遺作となった。
ウィリアム・フリードキン
8月7日/享年87歳
『フレンチ・コネクション』(72年)でアカデミー賞作品賞、監督賞を受賞したウィリアム・フリードキンはロサンゼルスの自宅で肺炎と心不全を併発して亡くなった。
1973年に手がけた『エクソシスト』は世界中で大ヒットし、社会現象となった。次に手がけた同名フランス映画をリメイクした『恐怖の報酬』(78年)の興行成績は振るわなかったが、その後も北野武監督の『その男、凶暴につき』(89年)のインスピレーションとなった『L.A.大捜査線/狼たちの街』(86年)や『BUG/バグ』(08年)『キラー・スナイパー』(11年)などオリジナリティあふれる作品を作り続けた。妻は女性初のハリウッドのメジャー・スタジオ社長となったシェリー・ランシング。9月のヴェネチア国際映画祭で遺作が上映された。
・[動画]ウィリアム・フリードキン監督が語る『エクソシスト』の制作過程/映画『ウィリアム・フリードキン:リープ・オブ・フェイス』予告編
マイケル・ガンボン
9月27日/享年82歳
『ハリー・ポッター』シリーズで『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』(04年)からダンブルドアを演じたマイケル・ガンボンは肺炎の発作を起こし、病院で家族に看取られて亡くなった。元々舞台の俳優で、ロンドンのナショナル・シアターに所属していたが、ピーター・グリーナウェイ(コックと泥棒、その妻と愛人)、ジュリア・ロバーツ主演の『ジキル&ハイド』(96年)、近年は『英国王のスピーチ』(11年)、『パディントン』シリーズでパストゥーゾ叔父さんの声を担当した。
マシュー・ペリー
10月28日/享年54歳
1990年代に世界で一大ブームとなったドラマ『フレンズ』でチャンドラーを演じていたマシュー・ペリーはロサンゼルスの自宅で遺体となって発見された。成功を収めた20代後半の頃からドラッグやアルコール依存に悩んだが、現場にはドラッグの痕跡はなかったという。当初は溺死の可能性が高いと見られたが、検死の結果、ケタミンの急性作用が死因とされた。鎮痛薬オピオイド依存症の治療で服薬してた処方箋薬の成分の影響が一因となり、虚血性心疾患、溺水という不運が重なったかと見られている。
ライアン・オニール
12月8日/享年82歳
『ある愛の詩』(71年)、スタンリー・キューブリック監督の『バリー・リンドン』(76年)や愛娘テイタムと共演した『ペーパー・ムーン』(73年)などで活躍したライアン・オニールの死は、息子のパトリックがインスタグラムを通じて発表した。2001年に慢性白血病を患っていることが判明し、闘病しながら俳優業も続けた。近年はTVシリーズ『BONES』に出演していた。
高橋幸宏
1月11日/享年70歳
1970年代からサディスティック・ミカ・バンド、イエロー・マック・オーケストラ(YMO)のドラマーとして、またソロでも活躍。ファッションデザイナーの顔も持ち、服装に無頓着だった20代の坂本龍一をファッショナブルに変身させた。『天国にいちばん近い島』(84年)、『四月の魚』(86年)、『異人たちとの夏』(88年)、『海辺の映画館―キネマの玉手箱』(20年)といった大林宣彦監督作品など映画にも出演。
扇千景
3月9日/享年89歳
宝塚歌劇団の娘役時代から映画に出演し、歌舞伎俳優の2代目中村扇雀(当時)と結婚。その後は東宝の『社長シリーズ』や『東京の休日』(58年)、『昭和残侠伝 一匹狼』(66年)、今村昌平監督の『神々の深き欲望』(68年)などに出演。1977年に参議院選に全国区で立候補し当選。2000年代には初代国土交通大臣となり、女性として初めて参議院議長も務めた。
坂本龍一
3月28日/享年71歳
スタジオ・ミュージシャンを経てYMOに参加し、1983年に大島渚監督の『戦場のメリークリスマス』に出演、映画音楽も担当。ベルナルド・ベルトルッチ監督の『ラストエンペラー』(87年)で日本人初のアカデミー賞オリジナル音楽作曲賞を受賞。『シェルタリング・スカイ』(91年)や『リトル・ブッダ』(94年)などベルトルッチ作品をはじめ、数多くの映画音楽を手がける。2014年、ガンを患っていることを公表し、闘病中に取り組んだ『レヴェナント:蘇えりし者』(16年)でゴールデングローブ賞にノミネートされる。晩年はジョニー・デップ主演の『MINAMATA-ミナマタ–』(21年)、『アフター・ヤン』(21年)などを手がけ、映画音楽としての遺作は是枝裕和監督の『怪物』(23年)。
奈良岡朋子
3月23日/享年93歳
舞台、ドラマ、映画で活躍し、NHKテレビ小説『おしん』、大河ドラマ『篤姫』のナレーションなどでも知られる。映画では『釣りバカ日誌』シリーズで三國連太郎が演じる「スーさん」こと鈴木一之助の妻・久江役として第9作からファイナル(第20作)まで出演した。生涯現役で、2022年に朗読劇の舞台に立ち、映画の遺作は沢田研二主演の『土を喰らう十二ヵ月』(22年)。
・[動画]沢田研二、恋人・松たか子に料理を振る舞う 料理研究家・土井善晴が手掛ける和食/映画『土を喰らう十二ヵ月』予告編
中島貞夫
6月11日/享年88歳
東京大学在学中に倉本聰らとギリシャ悲劇研究会を設立し、卒業後に東映に入社。京都撮影所に所属し、全編京都でゲリラ撮影を敢行した『893愚連隊』(66年)などを手がけた。フリーになった後は時代劇『木枯し紋次郎』シリーズや任侠映画、『極道の妻たち』シリーズを手がけた。晩年は京都映画祭総合プロデューサーなどを務め、2019年、20年ぶりの長編劇映画『多十郎殉愛記』が遺作となった。
・[動画]高良健吾の姿勢に巨匠・中島貞夫監督「わかっとるなこいつ」と太鼓判/映画『多十郎殉愛記』の記者会見
山田太一
11月29日/享年89歳
6人の若い男女を中心とした群像劇『ふぞろいの林檎たち』や『岸辺のアルバム』、『男たちの旅路』といったTVドラマの傑作の数々を手がけた山田太一は老衰のため神奈川県内の施設で亡くなった。大学卒業後に松竹に入社し、木下惠介監督の師事し、1960年代前半から木下のTVドラマの脚色を手がけ、1965年にフリーランスに転向。TVドラマを中心に、ユニークな着眼点とリアリティあふれる会話劇で『想い出作り。』『早春スケッチブック』などを手がける。
1990年代以降は寡作になり、2016年に渡辺謙主演の『五年目のひとり』を手がけた翌2017年、に脳出血を患い、療養中心の生活を送っていた。1988年、小説家として「異人たちとの夏」で山本周五郎賞を受賞し、同作は映画化もされたが、2023年にイギリスで『異人たち(原題:All of Us Strangers)』のタイトルでリメイクされ、2024年4月に日本公開を予定している。
イ・ソンギュン
12月27日/享年48歳
韓国映画として初めてアカデミー賞作品賞を受賞した『パラサイト 半地下の家族』(19年)で豪邸に暮らすIT企業社長を演じたイ・ソギュンは、ソウル市内の公園で車の中で亡くなっているのが発見された。妻から「夫が遺書のようなメモを残して家を出た」と通報を受け、警察が捜索していた。今年10月から違法薬物使用容疑で任意の取り調べを受けていたが、薬物検査の結果はすべて陰性だったという。また、騙されて薬物を摂取後に恐喝されたとして女性2人を告訴し、数日前に取り調べを受けたばかりだった。
韓国のドラマ『コーヒープリンス1号店』、『マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜』などで活躍し、映画は今年日本でもリメイクされた主演作『最後まで行く』(14年)、『キングメーカー 大統領を作った男』(22年)などに出演。『パラサイト〜』では主演のソン・ガンホらと映画俳優組合賞アンサンブルキャスト賞を受賞した。
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