オスカー受賞を見越して今週末公開に!『グリーンブック』の戦略とは?

#アカデミー賞#興行トレンド

『グリーンブック』
(C)2018 UNIVERSAL STUDIOS AND STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC. All Rights Reserved.
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2月25日(現地時間24日)、アカデミー賞授賞式が行われた。

『グリーンブック』が作品賞、助演男優賞(ハーシャラ・アリ)、脚本賞を受賞したほか、監督賞は『ROMA/ローマ』のアルフォンソ・キュアロン、主演男優賞は『ボヘミアン・ラプソディ』のラミ・マレック、主演女優賞は『女王陛下のお気に入り』のオリビア・コールマン、助演女優賞は『ビール・ストリートの恋人たち』のレジーナ・キングが受賞した。

『ボヘミアン・ラプソディ』が最多4部門、作品賞は『グリーンブック』/第91回アカデミー賞受賞結果

日本からは外国語映画賞に『万引き家族』、長編アニメーション映画賞に『未来とミライ』がノミネートされたが、どちらも受賞を逃した。

ここでは、オスカー受賞による興行効果を予測する。

まず現地アメリカだが、受賞の興行効果は少ない。作品賞候補作は公開中のものが多く、受賞効果よりむしろノミネート効果が大きい。例えば昨年の作品賞『シェイプ・オブ・ウォーター』の興行成績は、[ノミネート前まで3040万ドル+ノミネート発表から授賞式前まで2720万ドル+授賞式後630万ドル=6390万ドル]だった。

今年、ノミネート効果が最も大きかったのは『グリーンブック』だった(ノミネート前まで4250万ドル+ノミネート発表から授賞式前まで2710万ドル=6960万ドル)。作品賞の受賞で、興収はもうひと伸びしそうだ。

一方、日本でのオスカー受賞による興行効果を予測する。

最も効果が大きそうなのが『グリーンブック』だ。公開日が3月1日。受賞からわずか4日後で、話題性が持続している中での公開となる。実は配給元ギャガは過去に『英国王のスピーチ』『それでも夜は明ける』で受賞を想定した公開日を設定し、アカデミー賞効果を高めている(『英国王』は授賞式の2日前、『それでも』は授賞式の4日後の公開)。3月1日はシネコンの大半で入場料金が1100円となる「ファーストデイ」サービスを導入していることも、動員増の弾みになるだろう。

次に効果が大きそうなのが『スパイダーマン:スパイダーバース』だ。『未来のミライ』や、アカデミー賞の常連であるピクサーの『インクレディブル・ファミリー』、ディズニーの『シュガーラッシュ:オンライン』を破り長編アニメーション映画賞を受賞した。3月8日からの公開だが、3月1日〜3日まで全国のIMAXで先行上映が行われる。オスカー受賞が先行上映に勢いをつけ、本公開につながりそうだ。

同じく効果が大きそうなのが『女王陛下のお気に入り』だ。2月15日から全国118館で公開が始まっており、主演女優賞の話題性で動員の伸びが期待できそうだ。

『ボヘミアン・ラプソディ』は2月24日時点の興収は119億円。公開から3ヵ月以上が経ち、2月23日〜24日の週末は9700万円、週末興行ランキング9位と興行にもはや勢いはない。だが、主演男優賞受賞やアカデミー賞でのパフォーマンスの話題性から、興行にもうひと盛り上がりが生まれそうだ。(文:相良智弘/フリーライター)

相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。