鬼監督役のマイケル・ファスベンダー、ハートフルなコメディも意外と似合う!?
弱小サッカーチームの奇跡の実話『ネクスト・ゴール・ウィンズ』に主演
【この俳優に注目】マイケル・ファスベンダー
2001年のワールドカップで史上最悪の大敗を喫した米領サモアのサッカーチームが悲願の一勝を目指す過程を描く『ネクスト・ゴール・ウィンズ』。『ジョジョ・ラビット』のタイカ・ワイティティ監督の最新作で、弱小チームの立て直しのために招聘された監督、トーマス・ロンゲンと選手たちの実話をベースにしたスポーツ・コメディだ。
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オランダの元サッカー選手で、U-20サッカーのアメリカ代表チームを率いた実績もありながら解雇され、不機嫌丸出しでサモアにやって来たロンゲンを演じるのはマイケル・ファスベンダーだ。飲んだくれで怒りっぽいが、サッカーにかける情熱や根はまっすぐな主人公を魅力的に演じる。
見事なキャリアの中であまり縁がなかったコメディ
『X-MEN』シリーズのマグニートー役で知られ、同時に様々な映画賞で主演男優賞に輝いた『SHAME -シェイム-』(2011年)やアカデミー賞作品賞受賞作の『それでも夜は明ける』(2013年)をはじめ、Apple創設者のスティーヴ・ジョブズを演じた『スティーブ・ジョブズ』(2016年)、など幅広いジャンルで活躍してきたが、唯一あまり縁がなかったのがコメディだ。
これまでにも、巨大な被り物で顔を覆いっぱなしの前衛バンドのリーダーを演じた『FRANK -フランク-』(2014年)などシュールな作品にも出演しているが、本作のように王道でハートフルなストーリーにこれほどハマるという意外性に驚かされる。
“苦悩に満ちた男が似合う俳優”が鬼監督役でも真価を発揮
筆者が最初にファスベンダーの存在に気づいたのはフランソワ・オゾン監督初の英語作品『エンジェル』(2007年)。人気女性作家と結婚する画家志望の青年で、悲劇的な運命をたどる役どころだった。キャリー・ジョージ・フクナガ監督の『ジェーン・エア』(2011年)のロチェスター役、性依存に陥る者の孤独を演じた『SHAME-シェイム-』(2011年)、精神科医で心理学者のユングを演じた『危険なメソッド』(2011年)など暗い影を抱えて苦悩に満ちた男性が似合う。
そんな彼をローゲン役にと考えたワイティティ監督の慧眼はさすがだ。ワイティティは、物語の中で1人突出してしまうのではなく「映画の一部であると感じられる人物」を求めて、ファスベンダーに声をかけたという。確かに、『ネクスト・ゴール・ウィンズ』はローゲンを招いたサモアのチームのスタッフや選手の1人1人の個性を描いた群像劇でもある。最初こそ、“南の島にやって来た白人”然として異彩を放つローゲンが、彼らしさを失わないまま、いつしか周囲に溶け込んでいた。ファスベンダーはそんな究極の自然な流れをやってのける。
もちろん、存在感を際立たせて強烈な印象を残す役も得意だ。得体の知れないアンドロイドの不気味さを漂わせる『プロメテウス』(2012年)と続編『エイリアン:コヴェナント』(2017年)、人気ゲームの映画化で製作総指揮も務めた『アサシン クリード』(2016年)。ドイツ人の父とアイルランド人の母を持つ生い立ちを生かして流ちょうなドイツ語も披露するクエンティン・タランティーノ監督の『イングロリアス・バスターズ』(2009年)や、ペネロペ・クルスやブラッド・ピットなど錚々たる共演者と並ぶ『悪の法則』(2013年)などはインパクトを与えつつ、アンサンブルのピースとしての収まり方も秀逸だ。(文:冨永由紀/映画ライター)
『ネクスト・ゴール・ウィンズ』は、2024年2月23日より公開中。
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