満足度No1『グリーンブック』をもっと楽しむ4つのポイント

#グリーンブック#映画を聴く

『グリーンブック』
(C)2018 UNIVERSAL STUDIOS AND STORYTELLER DISTRIBUTION CO., LLC. All Rights Reserved.
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【映画を聴く】『グリーンブック』前編
親しむ音楽世界も真逆の2人の友情物語

さまざまな賞レースを席巻し、第91回アカデミー賞では見事に作品賞・助演男優賞・脚本賞の3部門を受賞した『グリーンブック』。すでに3月1日から公開が始まり、「ぴあ」初日満足度ランキング第1位となるなど好調な滑り出しを見せているが、ここでは同作を形づくる音楽面の諸要素にクローズアップしてみたい。

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●実在したピアニスト、ドン・シャーリーとは?

『グリーンブック』は実話を基にしたドラマだが、マハーシャラ・アリの演じる孤高の天才ピアニスト、ドン・シャーリーは一般的にほとんど知られていない。彼は1927年にジャマイカ人の両親のもとフロリダ州ペンサコーラで生まれ、教師だった母親に教わりながら2歳でピアノを始めている。

その才能が認められ、9歳からロシアのレニングラード音楽院でピアノと作曲を学び、18歳の時にボストン・ポップス・オーケストラを従えてコンサートデビュー。劇中で“ドク(ドクター)”と呼ばれているのは、音楽や典礼芸術、心理学の博士号を取得していたから。一説では8ヵ国に堪能だったとされ、いわゆる天才児だったのは間違いないようだ。

最初のレコードは、1955年にリリースされた『Total Expressions』。現在はこの作品を含む数枚のアルバムをSpotifyなどのストリーミングサービスでも聴くことができる。クラシックと呼ぶにはホットすぎ、ジャズと呼ぶにはクールすぎる彼の音楽は極めて独特だ。通常ピアノトリオといえば、ピアノ/ベース/ドラムという編成が一般的だが、劇中でも見られるようにシャーリーはピアノ/チェロ/コントラバスという編成を好み、それが彼の芸風をいっそうユニークなものにしていた。

●コパカバーナとカーネギーホール

ヴィゴ・モーテンセンの演じるトニー・“リップ”・バレロンガもまた実在の人物で、本作は彼の息子のニック・バレロンガが父から聞いた話を基にしている。トニーは1930年、NYブロンクス生まれのイタリア系アメリカ人で、兵役を終えたあと、NYの高級ナイトクラブであるコパカバーナのフロアマネージャーとして働くようになったという。

コパカバーナは、NYでも特に古い歴史を持つナイトクラブ。1950〜60年代にはフランク・シナトラやサミー・デイヴィス・ジュニアといったスターが多く出演して人気を集め、何度か転居をしながら2007年7月まで営業を続けている。サム・クックやシュープリームス、マーヴィン・ゲイらがコパカバーナでのパフォーマンスを録音したライヴアルバムを発表しているほか、バリー・マニロウはその名も「コパカバーナ」という曲を1978年にヒットさせている。

本作に登場するもうひとつの重要な音楽スポットがカーネギーホールだ。1891年にNYのミッドタウンに創設されて以来、世界の音楽家たちの憧れの場所であり続けているこのホールの上に住むシャーリーは、当時カーネギー・アーティスト・スタジオの専属作曲家を務めていた。

ブラジル・リオデジャネイロにある町の名に由来するコパカバーナがラテン〜大衆音楽の象徴だとすると、カーネギーホールはエスタブリッシュされたクラシック音楽の象徴である。そういう意味でトニーとシャーリーの立ち位置は、当時の時代背景を考えても真逆と言えるし、その対象性が物語をさらにドラマチックに演出しているわけだ。(後編へ続く…)

後編「天才音楽家2人が、名優マハーシャラ・アリを媒介にセッション!? オスカー受賞作を音楽面からチェック!」

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