【この俳優に注目】マハーシャラ・アリ
『グリーンブック』『ムーンライト』
現在公開中の『グリーンブック』で第91回アカデミー賞助演男優賞に輝いたマハーシャラ・アリ。一昨年の『ムーンライト』での同賞受賞に続く2度の受賞は、アフリカ系俳優としてデンゼル・ワシントン以来2人目の快挙だ。
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44歳にして名優の地位を揺るぎないものにしたマハーシャラだが、そのキャリアは決して順風満帆ではなかった。
1974年、カリフォルニア生まれのマハーシャラは大学に入るまで演技に興味はなかった。バスケットボールで奨学金を得てセントメリーズ・カレッジ・オブ・カリフォルニアに進学した後、単位が必要で取った演劇の授業をきっかけに、演技にのめり込んでいった。大学卒業後にカリフォルニア・シェイクスピア・シアターを経て、名門ニューヨーク大学ティッシュ・スクール・オブ・アーツに進学、修士号を取得した。
舞台俳優として初の主演作「ボクサー」で務めたのも2000年だ。そこから映画のオーディションもいくつか受け続けたが、出演には至らず、ロサンゼルスに移って『女検死医ジョーダン』(01〜02)『スレット・マトリックス』(03〜04)などテレビドラマで活動し始める。
2004年のSFドラマ『4400 未知からの生還者』で念動力を持つ元空軍パイロットを演じて注目された彼は、映画では2008年にデヴィッド・フィンチャー監督の『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』に出演、ブラッド・ピット演じる主人公の育ての親となる黒人夫妻をタラジ・P・ヘンソンと演じた。当時はマハーシャラルハズバズ・アリと名乗っていたが、2010年からマハーシャラ・アリ名義となった。
『ベンジャミン・バトン〜』の縁でフィンチャーが製作総指揮を務めたNetflix配信の『ハウス・オブ・カード 野望の階段』(2013〜)にシーズン1から4まで出演。冷静で頭の切れるロビイスト、レミー・ダントン役で、俳優としての認知度と人気が一気に高まった。魅力的で評判も良い役だったのだが、マハーシャラは自ら降板を申し出た。より幅広い活躍の場を求めてのことだった。
そして、次にやって来た作品が『グリーンブック』だ。彼が演じたのは、実在したピアニストのドクター・ドン・シャーリー。ヨーロッパで修行し、3つの博士号を持ち、語学堪能。語彙も豊かで身なりも整えたドクター・シャーリーを洗練された佇まいでエレガントに演じた。ヴィゴ・モーテンセンふんするイタリア系庶民の用心棒トニーと対峙する様に、フアンとはまた違うカリスマ性が光る。
『グリーンブック』は、教養ある繊細なアーティスト(アリ)とガサツな用心棒(モーテンセン)という水と油の関係が一番の見せ場だが、音楽家ドクター・シャーリーとしてスクリーン上で輝けなければ設定の説得力は半減してしまう。ピアノは全くと言っていいほど弾けなかったが、数ヵ月の訓練と演技力、そして映像のマジックで、天才アーティストの演奏を再現している。そして、マイノリティとしての複雑な葛藤をさらけ出す場面も胸を打つ。
『グリーンブック』は実質的に2人とも主役であり、ではなぜマハーシャラが助演賞候補となったのかというと、それはマハーシャラ自身の意向だったと、ピーター・ファレリー監督は昨年11月の「VUTURE」のインタビューで明かしている。早い段階から彼は監督に「2人とも候補になったら、どちらも受賞できない。今回はヴィゴの番だと思う」と語り、自分が助演男優賞候補になることが、ヴィゴにとっても自分にとっても助けになると話したという。その読みは見事に当たったわけで、なかなかの策士なのかもしれない。
アメリカではテレビシリーズ『トゥルー・ディテクティブ』の最新作シーズン3で主役を務めたばかり。さらにアカデミー賞長編アニメ映画賞受賞作『スパイダーマン:スパイダーバース』、木城ゆきと原作「銃夢」を映画化した『アリータ:バトル・エンジェル』がともに大ヒット公開中。アート系からブロックバスターまで縦横無尽の活躍は始まったばかりだ。
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