『ゲット・アウト』で脚光を浴びたジョーダン・ピールの監督2作目『US』がアメリカで大ヒットしている。3月22日から公開されオープニング興収は7030万ドル。R指定ホラー映画としては『IT イット “それ”が見えたら、終わり。』『ハロウィン』に次ぐ歴代3位、オリジナルの実写映画としては『アバター』に次ぐ歴代2位となった。31日時点での興収は1億2800万ドルと、前作『ゲット・アウト』(最終興収1億7600万ドル)を上回るペースで興収を伸ばしている。
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アデレード(ルピタ・ニョンゴ)と夫、2人の子どもたちは、ある夏、北カリフォルニアにあるアデレードの生家を訪れる。過去にトラウマを抱える彼女は、翌日ビーチで友人一家と過ごすうち、「家族に良くない出来事が起こる」という恐怖に囚われる。その夜彼らは、外に手を繋いで静かに立っている4人の人物を目撃する──。ピールが脚本も手掛けた本作は、『ゲット・アウト』同様、黒人を取り巻く社会状況を風刺する内容を盛り込んだ独創性が受けており、批評集計サイト「Rotten Tomatoes」では94%と批評家から絶賛。Boxofficeguru.comによると、観客の男女比は50対50%、53%が25歳以上。若年層が中心のホラー映画と異なり、大人の観客が多いのが特徴だ。
ピールは『ゲット・アウト』『US』と2作連続の大ヒットでヒットメーカーの地位を確立。スパイク・リー監督が初めてアカデミー賞脚本賞に輝いた『ブラック・クランズマン』のプロデューサーの1人に名を連ねており、今ハリウッドで最も勢いのあるクリエイターといえる。
活躍は映画界に止まらず、テレビ界にも広がっている。動画配信サービス、CBSオール・アクセス向けに名作SFドラマ『トワイライト・ゾーン』をリブート。製作総指揮とナレーターを務めている。HBOのドラマ『Lovecraft Country』ではJJエイブラムスと共同で製作総指揮を手がけ、1話分の脚本も担当している。
ホラー映画を足掛かりにヒットメーカーにステップアップする監督は、サム・ライミ、ピーター・ジャクソン、ギレルモ・デル・トロ、ジェームズ・ワンなど多い。アメリカでは若者層を狙って毎年ホラー映画が作られる。アクション大作と比べると低予算で製作できることから、監督やプロデューサーはアイデア勝負で作りやすいという背景もある。ピールは次作にホラー映画『キャンディマン』のリメイクを予定している(プロデュースと脚本を担当)。ホラー映画を題材にしたアイデアは尽きないようだ。(文:相良智弘/フリーライター)
相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。
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