【週末シネマ】『アベンジャーズ/エンドゲーム』
新しいMCUを予感させつつ有終の美飾る
2008年の『アイアンマン』から始まったマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の『アベンジャーズ』シリーズの完結編となる『アベンジャーズ/エンドゲーム』。3時間をかけて、ヒーローたちと宿敵サノスの壮絶な死闘が描かれる。
・『アベンジャーズ/エンドゲーム』が全米で驚異の興収デビュー!全世界でも新記録樹立
ストーリーは、前作『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』でサノスが全宇宙の生命の半分を一瞬で消し去った後の世界から始まる。アベンジャーズとガーディアンズ・オブ・ギャラクシーのメンバーも犠牲者の中に含まれていた。残されたヒーローたち──キャプテン・アメリカ、ソー、ブラック・ウィドウ、ハルク、ホークアイ、そして宇宙に残されたアイアンマン──はどうなったのか。世界を元に戻すため、サノスへの逆襲(アベンジ)のために彼らはどう行動するのか。何を書いてもネタバレと言われそうだが、“時間”をキーワードに、11年間21本の作品を通して大きく広がったMCUという世界を見事にまとめている。
本作をもってアイアンマン=トニー・スタークを演じるロバート・ダウニー・Jr.とキャプテン・アメリカ=スティーヴ・ロジャースを演じるクリス・エヴァンスはシリーズを去るが、頭脳明晰な大富豪で性格に難ありのトニー・スタークと古き良きアメリカの価値観を体現するキャプテン・アメリカ、それぞれの彷徨(ほうこう)は見応えがある。
『アイアンマン』が公開された2008年、コミック原作のヒーロー映画はどれだけ複雑な物語で構成しようが、桁外れの興行収入を記録しようが、しょせんはただの娯楽映画と見なされ、アカデミー賞などで評価されることはほとんどなく、出演する俳優たちにも「ブロックバスター出演で稼いで、インディーズの良作に出演して評価される」という考え方が少なくはなかった。それを徐々に変化させ、実力あるスター俳優たちのドラマとアクション、壮大なスケールの映像で、子どもから大人まで楽しめる極上のエンターテインメントに成長させ、18作目となる『ブラックパンサー』で第91回アカデミー賞に作品賞を含む6部門ノミネート、3部門受賞を成し遂げたのは、MCUという試みの最大の功績だ。
たった10年余りで、世界は大きく変わった。ハリウッドも大きく変わった。『〜エンドゲーム』には多様性と「Time’s up」という言葉を強く感じさせる瞬間がいくつもある。まだ続いていく新しいMCUを予感させる点も含めて、『アベンジャーズ』シリーズはこれ以上ない有終の美を決めてみせた。(文:冨永由紀/映画ライター)
『アベンジャーズ/エンドゲーム』は4月26日より全国公開中。
冨永由紀(とみなが・ゆき)
幼少期を東京とパリで過ごし、日本の大学卒業後はパリに留学。毎日映画を見て過ごす。帰国後、映画雑誌編集部を経てフリーに。雑誌「婦人画報」「FLIX」、Web媒体などでレビュー、インタビューを執筆。好きな映画や俳優がしょっちゅう変わる浮気性。
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