映画『存在のない子供たち』レバノン出身の女性監督が来日、思い語る

#存在のない子供たち#ナディーン・ラバキー#ハーレド・ムザンナル

ナディーン・ラバキー監督
ナディーン・ラバキー監督
ナディーン・ラバキー監督
左からワリードくん、ハーレド・ムザンナル、ナディーン・ラバキー監督、メイルーンちゃん
ハーレド・ムザンナル(音楽、プロデューサー)
メイルーンちゃんとナディーン・ラバキー監督

映画『存在のない子供たち』のナディーン・ラバキー監督が来日し、7月5日にユニセフハウスで行われたトークイベントに登壇した。

『存在のない子供たち』トークイベント、その他の写真

本作は、12歳で自分の両親を「僕を産んだ罪」で訴えたゼイン少年の物語。中東の貧民窟に生まれたゼインは、両親が出生届を出さなかったために、自分の誕生日も知らない上に、法的には社会に存在すらしていない。学校へ通うこともなく、兄妹たちと路上で物を売るなど、朝から晩まで両親に働かされている。そんな中、唯一の支えだった大切な妹が11歳で強制結婚させられてしまうところから物語は展開していく。

上映会終了後、余韻がまだ冷めやらぬ中、ラバキー監督とパートナーであり、音楽とプロデューサーをつとめたハーレド・ムザンナル、そして急きょ、「子どもの権利条約30周年」を迎える節目ということもあり、一緒に来日していたワリードくん(10歳)、メイルーンちゃん(3歳)の家族4人で登壇することとなり、会場は温かい拍手に包まれた。

ラバキー監督は「こうやって初めて来日できたこと、家族で作ったホームメイドのような作品が、はるばる日本という国に届いたことをとても嬉しく思っています。この作品が日本の観客にどのように受け入れられるのかワクワクしています。おそらく感情面で何か通じ合える作品になっているのでは、そんな風に感じていただけたらと思います」と挨拶。ムザンナルは「こうやってここに来られたことを幸せに思っています。彼女も言っていたように本当に親密な作品です。それをみなさんと分かち合えることを嬉しく思っています。涙を流された方もいると思うのですが、泣かせてしまって申し訳ありません(笑)」と語った。

劇中では、子どもの権利条約への無関心さ、不法移民、人種差別といった世界中で不当に扱われている子どもたちが中心に描かれている。なぜ本作を作ろうと思ったのか、ストリートキャスティングにこだわって作った経緯について、ラバキー監督は「レバノンに住んでいると、劇中に出てきたような仕事をしている子どもたちの光景を日々目にします」とコメント。

続けて「レバノンは150万人の難民の受け入れをしているのですが、その影響もあり経済状況が悪化しており、それが最も色濃く、一番に影響を受けてしまうのが子どもたちなのです。その事実はショッキングで責任を感じましたし、どうにかしなければと思いました。何もしないということはそれに加担していることと同じです。子どもたちが、そんな世界に生きなければならない状況を私たちは作っている。その 状況に適応してしまってはいけないんです。最近の統計によると10億人以上の子どもたちが世界中で何らかの権利を奪われています。発展途上国に限らず先進国でも同じ状況です。私にできることは映画を作ること。映画というツールは真に物事の見方を変えられる力を持っていると信じています。この作品を見て、みなさんが心の中に、子どもたちが安心して暮らせる状況を作らなければならない、このままではいけないという気持ちを宿していただけたら、少しずつ変わることができるのではないか。すべては子どもたちから始まると私は思っています。負の連鎖を断ち切らなければならない、この現状があることに驚いてはいけない、これは私たちが作り出していることなのだから」と真摯に語った。

また、主人公を演じた少年ゼインの希望溢れる印象的なシーンについて、ラバキー監督は「ゼインが笑顔を向けるシーンは『僕はここにいる』『もう、無視はしないで欲しい』、そういう訴えが観客にストレートに伝わるシーンだと思います。同時に、僕たちは希望を持って生きていけるという思いを感じ、私も感情的になってしまうのですが、実は映画の外でもその笑顔は続いているんです」と答えると、現在、ゼインはノルウェーに移住し、学校に通い、家族と共に笑顔で暮らしていることを報告していいた。

『存在のない子供たち』は7月20日よりシネスイッチ銀座ほかにて全国公開となる。

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