念願の作品のお披露目に開始5秒で涙を見せた石原、壮絶演技を支えた現場とは?
石原さとみが主演を務め、『空白』(21年)『ヒメアノ〜ル』(16年)の吉田恵輔がオリジナル脚本でメガホンをとった映画『ミッシング』。本作の完成披露試写会舞台挨拶が開催され、石原、中村倫也、青木崇高、森優作、小野花梨、細川岳、吉田恵輔監督が登壇。制作や現場でのエピソードなど、盛りだくさんのトークを繰り広げた。
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満員の観客を前にマイクを握った石原は、なんと第一声から涙声。「私の夢が叶った作品です。いち早く皆様にお届けできることが心の底から嬉しいのですが、怖い部分もあります。でもお届けできることが本当に嬉しいです」と、涙を浮かべてお披露目の日を迎えた喜びをかみしめるように語った。
本作は、石原の並々ならぬ“演技”への思いから始まったともいえる作品で、今から7年前に石原が監督の吉田監督に出演を直談判したことがきっかけだった。石原は「今のままじゃいけない。変わりたい、と自分を壊してほしいという衝動に駆られました」と当時を振り返り、自分自身を変えてくれるような人を探している中で吉田監督の作品に出会ったという。伝手をたどり、どうにか吉田監督まで行きつき、直接直談をしに行ったというエピソードを披露した。
対して吉田監督は「俺の映画ってもっと地味で、下町が舞台の映画が多いけど、石原さんは華やかすぎて」という理由で一度はお断りしたという。しかし「石原さんをちょっとこっちの世界に引きずり込めないかな」と、ある種のギャンブルのようだったとキャスティングの経緯について語った。そして「多分みんなが知っている石原さとみとは全然違うものが映っている自信があります!」と確かな手応えをにじませた。
撮影時、石原は「沙織里は髪とかかまっていられないから」と、役作りで髪も痛ませるために「監督と一緒に美容院に行きまして、美容師さんに一番髪の毛を痛ませる方法はどうすればいいですか」とアドバイスを求めたという。そんな石原について吉田は「イタコのようだった。そういうタイプの役者さんは初めて会った」と全身全霊で挑んだ石原の印象を語った。
そんな石原と19年ぶりの共演を果たした中村は、実は生年月日も血液型も同じだという。今回の共演について 「さとみちゃんと一緒できてとても嬉しいし、ものすごく感慨深い」と明かし、改めてその気持ちに向き合ってみると、「僕は石原さとみの背中をずっと追いかけていたんだな」と、同年代の俳優として彼女にリスペクトを伝えた。ジャーナリストとして葛藤する自身の役柄は、「抱えているものが表に出ないようにやろうと思いました」と演じるにあたっての想いを語った。
夫婦役で共演した青木は「やっぱり沙織里のあり方をまず感じて、自分がどういう立場で立つかっていうことが重要だったんじゃないかなと思った」と、現場での様子や石原についての気持ちを明かした。
そして石原が「たくさん睨んだ記憶があります…」と申し訳なさそうに呟くと、青木は「かまへん、かまへん!」と阿吽の呼吸を見せて会場を和ませていた。言葉ではなく、まさに“夫婦”としての支え合いがあったことがわかったが、石原も現場で青木の存在に本当に助けられた、と感謝しきりだった。
沙織里の弟・圭吾役の森は、自身がキャスティングされたことについて「クランクインの日に挨拶をさせてもらったんですけど、吉田監督から『あれ? 素人の方ですか?』とジョークが飛んできたという。しかしそれが求められているトーンだなと思ったので、一生懸命それをやりました」と撮影中の姿勢をコメントした。
吉田監督は劇中での沙織里が圭吾を殴るシーンについての裏話を披露。頭を殴るときはパー、肩の時はグーで、と決めていたが、熱くなってきた石原は頭をグー、肩をパーと逆で殴りだしたという。「逆、逆!」と思いながらも結局そのいちばんハードなテイクを本編で採用したそう。石原は翌日「腕が痛い」と呟いていたそうで、森は「殴られた方はもっと痛い」と思いながらも「自分で見ても結構面白かった」と振り返っていた。
最後の挨拶で吉田監督は、「僕たちにとってとても大切な作品なので、これが皆さんにどう届くのか非常に怖くもあり、楽しみでもあります。この映画を見て世の中が少しでも優しくなることを祈っております」と力強く語った。
石原は「この経験は、本当に何年経ってもこの作品が転機だと言えます。それぐらい、私にとって宝物のような時間ですし、宝物のような作品です。優しい光が必ずあります。それを受け取っていただけたら、誰かに渡していただけたら嬉しいです。今日は本当にありがとうございました」と再び涙ぐみながらコメントし、それを受け止めるように温かい拍手に包まれて、舞台挨拶は終了した。
『ミッシング』は5月17日より全国公開。
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