(……前編「『おっさんずラブ』はこうでなくちゃ!と思わせてくれる大満足の劇場版」より続く)
【週末シネマ】『おっさんずラブ』中編
ファンが見たいストーリーを見せてくれた!
社会現象になるほど大きな盛り上がりを見せた『おっさんずラブ』が映画化されて公開中だ。これが、良い意味で恋愛に終始した純粋な恋愛映画なのだ。
登場人物の誰かが難病になるシリアス展開があったり、はたまたタイムスリップするファンタジー展開があるわけじゃなく、惚れた腫れただけで一本の映画が成立してる。この恋愛こそが『おっさんずラブ』の魅力だと思うから、コレが見たかったのよ! これでこそ『おっさんずラブ』なのよ!!と嬉しくなってしまった。
映画化されると作り手もヘタに肩に力が入ってしまうのか、そんな方向に膨らませなくてもいいのに……とガッカリすることも少なくない。けれどもファンが見たい『おっさんずラブ』を見せてくれた。
予告編にあるように爆発シーンがあったり、記憶喪失があったりもするが、恋愛ドラマのスパイスとなる程よい加減。ドラマから分離して浮いてしまうことなく、うまく絡み合って恋愛ドラマを盛り上げる要素になって良い仕事してる。
そもそもおっさんずラブはオフィスで働くいい年した男たちが恋のさや当てを繰り広げる恋愛ドラマだ。主人公の不動産会社の営業マンである春田創一は仕事においても家事をやらせてもドジっ子で、ブチブチと愚痴を言ってばかりのダメ男。彼がダンディで頼れる部長の黒澤武蔵と、後輩だけどエリートで仕事のできる牧凌太から、驚きの告白をされて動揺して振り回されながらも恋を見つけていく。
田中圭演じるこの春田がクソかわいい! オロオロしたりびびったり、ダメなところが逆にかわいいのだ。それでいて、ダメ男なりに仕事は誠実に頑張る姿はいじらしくて憎めない。彼の愛らしさは劇場版でも健在で、冒頭のドジっ子からくるアクションコメディや、彼が驚く顔を何度も見せるカットには思わず吹き出してしまう。
このドラマで新しい一面を見せてファンを増やした吉田鋼太郎扮する黒澤部長もしかり。オードリー・ヘプバーンを参考にしたという乙女なヒロインぶりは世間を驚かせつつトリコにしたが、劇場版でも見せてくれる。
ちなみにドラマシリーズ放送中からインスタグラムで“武蔵の部屋”という黒澤部長のものと思われるアカウントが存在し、春田を隠し撮りしたような写真がアップされていた。無防備な春田がかわいく、この春田を愛でている部長にもキュンと萌える。隠し撮りを覗き見てるような禁断のワクワクと、テレビの枠の外でもドラマが広がっているような妄想も与えてくれるためか、番組の公式アカウントよりもフォロワー数がグッと多いのが面白い。
このアカウントは緻密な宣伝戦略かと思いきや、スタッフの思いつきから生まれたのだとか。
また今回は『おっさんずラブ外伝』という短編がティーバーで配信中だ。不動産会社の瀬川舞香女史が撮影する劇中カメラのていで、キャラクターを紹介する映像だ。個人的には武川主任が春田の体を触りまくる3編目がおすすめ。遊びを楽しんでこその作品だから、ぜひ見て欲しい。
作品を楽しむ心とキャラクターへの愛がスタッフからも滲み出てるからこそ、ファンの心をつかんで離さないのだろう(…後編へ続く)。
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