(……中編「ヘプバーンお手本の乙女っぷりで人気! 黒澤部長役で新たなファン増やした吉田鋼太郎」より続く)
【週末シネマ】『おっさんずラブ』後編
ハラハラキュンキュンして、最後の最後はニヤニヤしちゃう!
社会現象になるほど大きな盛り上がりを見せた『おっさんずラブ』が劇場版となって帰ってきた。
ドラマシリーズでは主人公の春田に惚れる黒澤部長なわけだが、彼は記憶喪失になってしまい、春田のことだけ忘れてしまう。しかし、そこは黒澤部長、もう一度春田のことを好きになってしまって……⁉
と、部長の再燃も気になるが、このドラマのメインCPは春田と牧。林遣都が演じる牧は年下ながら仕事も料理もできるスパダリだけど、能天気な春田と対照的に健気に思い詰めちゃうタイプ。そこがキュンとするわけだけど、悪い方向に思い悩む彼にはハラハラさせられる。
ドラマシリーズから1年後が描かれる劇場版では、牧は本社のプロジェクトチームに加わり、多忙も手伝って春田とは心も実際にも距離ができてしまう日々。見てる方はまたもや悪い予感がモヤモヤしだすなか、さらなる追い討ちが。プロジェクトチームのリーダーである沢村一樹扮する狸穴迅が指揮をとり、牧にねちっこくボディタッチしつつやたらと接近する。
一方、春田は、志尊淳が演じる新入社員の山田ジャスティスとコンビを組むことになり、つぶらな瞳と人懐こい笑顔のジャスティスが春田を兄のように慕ってくる。沢村一樹は相変わらずエロ男爵だし、志尊淳はあざとかわいいし、2人とも『おっさんずラブ』の世界観を壊すことなくうまくハマってる。
三角関係どころか5人にもなっていったいどうなっちゃうの⁉と思っていたらまさかのサウナで鉢合わせ! ジャスティスが「熱い」と出て行っちゃって、部長と2人に! 黒澤部長のタオルの位置! やたら高くて妙に意識して乳首を隠す様子が可笑しくて。そこへ狸穴と牧が揃って入ってきて、黙っていられない春田と牧が痴話喧嘩。しまいには水を掛け合って、裸同士で揉みくちゃに‼ 大人の男たちが真剣にわちゃわちゃする姿に大笑いしてしまう。
でも、ただのコメディではなく、春田と牧がすれ違うシリアスなシーンはもどかしくて切なくて見てると胸が苦しくなってくる。ああ、映画を見て、純粋に恋愛でハラハラしたりキュンキュンしたり苦しくなるのって、いつぶりだろう?と久しぶりの感覚が蘇ったことを改めて感じた。オーソドックスな恋愛映画っていいものだなぁとニヤニヤしちゃうのだ。
おっさん同士の恋愛にオーソドックスというのは不思議かもしれないが、素直にそう思わせられる純粋さがある。しかも、男同士ということをガン無視して突き進むわけでなく、親との会話でさりげなく触れてさらりと描くあたりも良い塩梅で心憎い。
ドタバタコメディだけど、実は繊細な心配りをしてバランスを図っている作品なのだろうと思う。恋愛はもちろん、仕事に関しても笑いを交えつつ本質的にはとても誠実な姿勢で、そこが見る者の共感を呼ぶのだろう。ハラハラ、もやもや、ニヤニヤ、恋愛映画の醍醐味を心置き無く味わってほしい。
エンドロールの後もお楽しみのニヤニヤシーンがあるから、どうぞ席は立たずに最後まで見届けることをおすすめする。(文:入江奈々/映画ライター)
『劇場版おっさんずラブ 〜LOVE or DEAD〜』は公開中。
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