ソニーとディズニーの交渉決裂でスパイダーマンがMCUから離脱

#ビジネス#興行トレンド#20世紀フォックス#スパイダーマン#ソニー・ピクチャーズ#マーベル・シネマティック・ユニバース#マーベル・スタジオ

『ヴェノム』
(C) &TM 2018 MARVE
『ヴェノム』
(C) &TM 2018 MARVE

8月下旬、スパイダーマンが「マーベル・シネマティック・ユニバース」(MCU)から離脱することが明らかになった。そもそもマーベル・コミック原作の映画は3つの映画会社が製作しており、『X-MEN』を20世紀フォックス、『スパイダーマン』をソニー・ピクチャーズ、『アイアンマン』など『アベンジャーズ』をマーベル・スタジオ(ウォルト・ディズニー)が製作している。マーベル・スタジオが製作するマーベル映画は登場キャラクターや世界観がつながっており、「マーベル・シネマティック・ユニバース」と呼んでいる。

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2015年にはソニーとマーベルが提携し、スパイダーマンがMCUに合流。『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』『アベンジャーズ/エンドゲーム』にスパイダーマンが登場したほか、『スパイダーマン:ホームカミング』『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』をソニーとマーベルが共同で製作した。

スパイダーマンがMCUから離脱するきっかけは、ソニーとマーベルの親会社ディズニーの交渉が決裂したこと。15年に結んだ提携は『ファー・フロム・ホーム』で終了することになっており、両社では今後の提携内容を交渉。ディズニーは今後のスパイダーマン映画の製作を50対50の共同出資(収益も半々)にすることを要求(これまでは興行収入の5%を得る契約)。これをソニーが拒否したことで交渉が決裂したようだ。

振り返れば、スパイダーマンがMCUに合流したのは、ソニーが単独で作るスパイダーマン映画がヒットしなくなったから。サム・ライミ監督、主演トビー・マグワイアで02年〜07年に製作された3本は全米興収4億400万ドル、3億7400万ドル、3億3700万ドルを記録する大ヒット。一方マーク・ウェブ監督、主演アンドリュー・ガーフィールドでリブートした2本は12年『アメイジング・スパイダーマン』2億6200万ドル、14年『アメイジング・スパイダーマン2』2億300万ドルで、じりじりと興収を落としていた。このまま3作目を作っても大ヒットは見込めないとソニーは判断し、マーベルと提携した。

MCU入りを果たしたスパイダーマンはソニーとマーベルが共同で製作したが、ソニーが独自に製作したスパイダーマン関連映画もある。悪役ヴェノムを主役に据えた『ヴェノム』とアニメ映画『スパイダーマン:スパイダーバース』だ。どちらも大ヒットを記録し、それぞれ続編が準備されている。ソニーでは「マーベルの力を借りなくても独自にスパイダーマンを作っていける」と自信を持ったのかもしれない。

一方、今後のマーベル映画だが、ディズニーが20世紀フォックスを買収したことで『X-MEN』がMCU入りすることが可能になった。また『X-MEN』ではないが、ブレイドを新たに作り直す計画をマーベルは発表している。スパイダーマン抜きで広がっていくMCU。再びソニーとマーベルが手を結ぶ日は来るのだろうか。(文:相良智弘/フリーライター)

相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。