王道ラブコメ主演で注目を集めるシドニー・スウィーニー
【この俳優に注目】現在公開中のラブコメ映画『恋するプリテンダー』。最高の出会いから一転、気まずい関係になったのにカップルのふりをするはめになった男女が、いがみ合いながら距離を縮めていくという王道の展開にセクシーな笑いの要素を織り込んだ作風は1980年代から2000年代初期のラブコメ映画を思わせる。
シェイクスピアの「から騒ぎ」をもとにしたストーリーで、ロースクールに通いながらも将来に迷い、元カレに復縁を迫られている主人公、ビーを演じたシドニー・スウィーニーは海外ドラマ・ファンの間では既によく知られる人気と実力を兼ね備えた26歳だ。
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シドニーが一躍注目の的となったのはHBOとA24によるZ世代群像劇のドラマ『ユーフォリア/EUPHORIA』(2019年~)のキャシー役。ドラッグなど様々な問題を抱えたティーンたちの葛藤を描くドラマで、壊れた家庭に育ち、恋愛に流されやすく不安定な高校生役をヌードも厭わずに熱演したのは記憶に新しい。
容姿や演技に対する苦言に“おっぱい”で応酬
製作総指揮も務める『恋するプリテンダー』で演じたビーは愛情深い家庭に育ち、オーストラリアのリゾートで姉の結婚式に参列する。劇中ではビキニ姿や体にフィットした衣装で、相手役の金融マン、ベンを演じるグレン・パウエル(『トップガン マーヴェリック』)ともども、体を張った際どいジョークを効かせた場面で笑いを誘う。そんな描写にちょっと懐かしさを感じる作品だが、ビーの自己との向き合い方や恋愛観、周囲の人物像などは現代の感覚にアップデートされている。
シドニー本人も、映画のプレミアなどのイベント出席時やメディアに登場する時はグラマラスな体型を強調するスタイルが多い。豊満な胸を誇示するようなポーズはあざといほどで、最近はハリウッドのベテラン女性プロデューサーが「彼女は可愛くもないし、演技もできない。なぜ彼女がホットなのか?」と苦言を呈したほどだが、それに対してスウィーニーはインスタグラムに「SORRY FOR HAVING GREAT TITS(すごいおっぱいを持っててごめんなさい)」と書かれたスウェット姿をアップして応えた。
ローリング・ストーンズの2023年のシングル「Angry」のミュージック・ビデオでの溌剌とした演技からも「自分の肉体は自分のものである」という思考のもと、見せ方も含めて戦略的であることは明白だ。
夢を支えた両親は破産、諦めずに挑戦を続けて
ではセクシーなだけが売りかといえば、もちろん違う。セレブリティとしての顔とは別に、俳優としての彼女は実に多彩な表情を見せる。最近では、アメリカ国家安全保障局(NSA)職員を演じた主演作『リアリティ』(2022年)やスパイダーウーマンの1人となる少女を演じたMCUの『マダム・ウェブ』(2024年)では艶やかさを封印して役になりきる演技派だ。アメリカでは3月に自身が製作・主演する『Immaculate(原題)』も公開され、順風満帆な彼女のこれまでの歩みを振り返ってみよう
1997年にアメリカのワシントン州スポケーンに生まれたシドニーは幼い頃から演技に興味を持ち、12歳の時に地元で行われたインディーズ映画のオーディションを受けた。母は元弁護士で父は医療関係という家庭に育った彼女は、両親に5年間のビジネスプランをプレゼンして説得し、オーディションに見事合格して最初の役を得た。
その後は近郊のシアトルなどでCMに出演し、13歳になると家族でロサンゼルスに移住し、『HEROES/ヒーローズ』や『クリミナル・マインド』、『グレイズ・アナトミー』などTVシリーズへのゲスト出演や短編映画に出演。2018年にTVシリーズ『ハンドメイズ・テイル/侍女の物語』とミニシリーズ『シャープ・オブジェクト KIZU ―傷―』で注目され、クエンティン・タランティーノ監督の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019年)でマンソン・ファミリーの一員を演じ、同年からスタートしたゼンデイヤ主演のTVシリーズ『ユーフォリア/EUPHORIA』で大ブレイクを果たした。
それまでの道のりは決して楽なものではなく、経済的な苦境に見舞われて両親は離婚、破産を申請した。彼女はアメリカの業界誌「Variety」のインタビューで「両親は私の夢を支えるために多くの犠牲を払い、多くを失いました。私はただ、その甲斐があったと示す責任があると思いました」と、ブレイクまでの数年間を諦めずに挑戦し続けたモチベーションを語っている。
不要なトップレスシーンがあれば意見する強さも
『ユーフォリア~』で演じたキャシーは、恋愛に流されやすく不安定で傷つきやすい高校生。露出の多い服装やヌード、セックスシーンもあったが、果敢に演じたシドニー本人は監督のサム・レヴィンソンと話し合って納得した上で撮影に臨んだこと、さらに不要と感じたトップレスシーンについてはその旨を指摘し、レヴィンソンも応じてシーンをカットした。新進の立場でも意見を表明するのを臆さない勇気は稀だ。同作と『ホワイト・ロータス/諸事情だらけのリゾート』出演と合わせて、彼女は2022年にプライムタイム・エミー賞のTVシリーズ部門助演女優賞にノミネートされた。
先述の「Variety」のインタビューで「プランBを準備するのは失敗の用意をすることだと思っていた」と過去を振り返る発言も彼女の強さを表している。最新作『Immaculate(原題)』は彼女が2014年、16歳の時にオーディションを受けたものの当時製作に至らなかった経緯がある。シドニーは『ユーフォリア』でブレイク後に脚本の権利を購入し、自身の製作会社「Fifty-Fifty Films」で映画化を実現させた。これも信念を貫く彼女を表すエピソードのひとつだ。
私生活では14歳上の実業家の男性と婚約し、TikTok「シドのガレージ(syds_garage)」では趣味のヴィンテージカーの改造の動画を公開している。
『バーバレラ』リメイク版など主演作が次々と決定
5月に開催されたMETガラでは、トレードマークでもあったブロンドの髪を黒く染めて、また新たな表情を見せた。
今後はロン・ハワード監督の『Eden(原題)』やジェーン・フォンダ主演のSFエロティックアクション『バーバレラ』のリメイクへの主演が控える。そして実在の女子ボクシング元世界チャンピオンのクリスティ・マーティンを演じる主演映画の製作も決定したばかりだ。
作品ごとにガラリと雰囲気を変えるカメレオン俳優だが、その助けとしているのは演じる役について自身の手で詳細に綴る“キャラクター・ブック”だ。「私自身の記憶や私生活の一切をキャラクターの中にないようにしたから」だという。役と自身を完全に切り離すことは同時に、誰もふれることのないパーソナルな部分を保つことに繋がる。だからこそ、彼女はあざとく扇情的な表現も辞さない。ただ消費されて終わりではなく、次のステップへの足がかりにして高みへと歩み続けている。(文:冨永由紀/映画ライター)
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