名優たちが次々に熱演!
アメコミ映画のトレンドを象徴する存在
バットマンの悪役ジョーカーの誕生を描く『ジョーカー』が10月4日から公開される。ベネチア映画祭で最高賞の金獅子賞を受賞した話題作だ。アメコミ原作の映画が、カンヌ、ベルリンを含めた世界3大映画祭で最高賞に輝くのは史上初の快挙。ジョーカーはこれまで何度か映画に登場しているが、アメコミ映画のトレンドを象徴する存在だ。
まずは89年、ティム・バートン監督『バットマン』でのジョーカー。演じたのはジャック・ニコルソン。当時52歳で、既にアカデミー賞を2度受賞していた(『バットマン』出演後に『恋愛小説家』で3度目の受賞)。主役のマイケル・キートンを上回る大物俳優で、映画の話題性を高めるのに大いに貢献した。化学工場の廃液に放り込まれたことで狂人と化し、“笑う殺人鬼”ジョーカーへ変貌。バットマンを食う怪演を見せた。アメリカで興収2億5100万ドルをあげ、年間1位の大ヒットを記録。以降、『バットマン』は4作まで作られる。アメリカではアベンジャーズやスパイダーマンなど数多くのアメコミ映画が作られ大ヒットしているが、その先陣を切ったのがバットマンであり、ジョーカーだ。
次が08年、クリストファー・ノーラン監督『ダークナイト』で、演じたのがヒース・レジャー。ジョーカーは凶悪犯罪を繰り返し、「バットマンが正体を明かすまで殺人を続ける」と声明を出す。ニコルソンとは打って変わり、頭脳戦でバットマンを窮地に追い込むレジャーの演技が大きな話題になり、興収5億3500万ドルを記録。当時、『タイニタック』に次ぐ歴代興収2位の大ヒットとなった。批評家が絶賛したものの、アカデミー賞では作品賞や監督賞にノミネートされなかった。これが映画関係者の反発を招き、翌年から作品賞候補数が増えるきっかけとなった。レジャーは怪演が認められ、アカデミー賞助演男優賞を受賞した。アメコミ映画が単なる娯楽作から秀逸なドラマも生み出すジャンルへ成長した証となった。
近年ベネチアで金獅子賞を受賞した作品はアカデミー賞レースを引っ張る存在になっている。一昨年の『シェイプ・オブ・ウォーター』はアカデミー賞作品賞や監督賞などを受賞、昨年の『ROMA/ローマ』は監督賞などを受賞した。アカデミー賞でアメコミ映画が作品賞候補となったのは『ブラックパンサー』、助演男優賞受賞は『ダークナイト』があるが、監督賞や主演部門のノミネートはない。両部門で候補になれば、アカデミー賞の歴史を塗り替えることになる。(文:相良智弘/フリーライター)
相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。
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