10月公開作1位は『ジョーカー』。10月27日までの公開24日間で興収35億円をあげ、最終興収で50億円超えが見込めるペースで動員を伸ばしている。アメコミ原作の映画では『アベンジャーズ』などマーベルのヒット作が目立つが、今年はDCコミックスの『アクアマン』が興収16億円のスマッシュヒットを記録。本作の大ヒットもあり、DCの日本市場での存在感が増している。
ヒットの要因は、20代30代のライトな映画ファンと、30代40代のアメコミファン(原作のDCコミックスのファン)の両方をつかめたこと。アメコミ映画としては初めてベネチア映画祭で最高賞の金獅子賞を受賞した話題性、社会問題を扱った内容、主人公の境遇への共感などが、ライトなファンに口コミで広がった。
一方、ジョーカーはDCファンに人気の高い悪役なので、ファンからソッポを向かれないような配慮も行った。ポスターやチラシのメインビジュアルには主演ホアキン・フェニックスの顔がアップの写真を使用。タイトルの表記は、アルファベットの「JOKER」を大きくあしらい、カタカナは小さめ。掲載するホアキン・フェニックスの名前や宣伝コピーの文字はシンプルにしてかっこよさを出した。
注目度アップに貢献したのが日米同時公開だ。同時公開だと宣伝で使える映像や写真などが限られるデメリットがある一方、ネット時代なので米国で高まった話題性が瞬時に日本に伝わり、観客を引き付けられるメリットがある。
日米同時公開ながら、公開1ヵ月前からマスコミ向け試写会を実施した点も異例だ。同時公開作は完成するのが公開前ギリギリになることが多く、公開直前に試写会を行うか、もしくはまったく行わない。だが『ジョーカー』はベネチア映画祭に出品することから早めに完成していた。そこで公開前の約1ヵ月間にわたり試写会を実施。マスコミの注目度は高く、試写室は連日満席。マスコミの批評がしっかり観客へ伝わった。
2位は『HiGH & LOW THE WORST』、3位は『マレフィセント2』。
[10月公開作ランキング]
1位『ジョーカー』35億円
2位『HiGH & LOW THE WORST』7.8億円
3位『マレフィセント2』7.7億円
(10月27日時点。ムビコレ調べ )
相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。
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