世界1位目前! 勢い増す中国映画市場に、役所広司主演の日中合作アクションが挑む

#オーバー・エベレスト#興行トレンド#チャン・ジンチュー#テレンス・チャン#ユー・フェイ#役所広司#陰謀の氷壁

『オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁』
(C)Mirage Ltd.
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『オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁』プロデューサーのテレンス・チャン
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敏腕プロデューサーがヒットを賭けた
世界的俳優・役所広司の起用

役所広司が主演した日中合作映画『オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁』が11月15日から公開される。ヒマラヤ救助隊「チーム・ウィングス」の隊長ジアン(役所)は、エベレスト南部で墜落した飛行機に残された機密文書の捜索をインドの特別捜査官から依頼される。ジアンはチームのメンバーと共に墜落現場へ向かう──。

『オーバー・エベレスト』超大物プロデューサーがド新人監督の作品を製作した理由とは?

注目ポイントは、テレンス・チャンがプロデュースにあたったこと。ジョン・ウー監督作を数多くプロデュースしたことで知られる彼は、香港で『ハード・ボイルド 新・男たちの挽歌狼たちの絆』(92年)などをプロデュース後、『ハード・ターゲット』(93年)でハリウッドに進出。その後は『フェイス/オフ』(98年)、『M:I−2』(00年)、『レッドクリフ』シリーズ(08年、09年)など米国と中国をまたにかけて製作にあたっている。

監督・脚本を手がけたユー・フェイは映画未経験で、本作が初監督作。チャンの元に製作の相談があった際、最初は乗り気ではなかったそうだが、監督の熱意に負けて製作に乗り出した。監督未経験だったものの、彼が作った絵コンテを見て画面でストーリーを語ることができると判断した。

チャンが本作のプロデュースにあたり、ヒットの可能性を見出したのが、エベレストと役所広司。製作当時、中国映画でエベレストを題材にしたのは本作が初めて。またジアン隊長は50代か60代の男性という設定だが、中国人俳優でこの役をできそうな人が少なかったため、外国人俳優にも目を向け役所を起用した。

役所は世界的に有名な俳優だ。カンヌ映画祭パルムドールを受賞した『うなぎ』(97年)をはじめ、カンヌ映画祭国際批評家連盟賞を受賞した『EUREKA ユリイカ』(00年)、同じく国際批評家連盟賞を受賞した『回路』(01年)に出演。ハリウッド映画では『SAYURI』(05年)、『バベル』(06年)、『シルク』(07年)に出演している。

世界的に知名度がある日本人俳優といえば渡辺謙が頭一つ抜き出ているだろうが、役所のほか、ハリウッド映画の出演作が多い真田広之や浅野忠信も世界の観客へのアピール度は強そう。来年公開の『ゴジラvsコング』に出演する小栗旬も世界へ羽ばたいていくのか、気になるところだ。

本作は中国と米国で11月29日公開予定だが、特に中国市場での興行に期待がかかる。役所に加え、ヒロイン役に有名な中国人女優チャン・ジンチューが出演しているからだ。彼女は中国で大ヒットした『唐山大地震』(10年)に主演したほか、『ラッシュアワー3』(07年)、『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』(15年)などハリウッド映画にも出演している。

中国市場は米国市場に次ぐ世界2位だが、あと1、2年で米国市場を抜くといわれるほど勢いがある。シネコンのスクリーン数では既に中国が上回っており、中国6万スクリーンに対し米国は4万スクリーンだ(日本は3500スクリーン)。中国ではアート系作品もシネコンで上映されるため、初日の興行収入が悪いとすぐ上映打ち切られるマイナス面があるものの、一般観客を狙う作品にとってはスクリーン数の多さはヒットの可能性を高める。中国での興行収入が米国を上回る作品も数多くあり、今年は『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』(中国2億100万ドル、米国1億7400万ドル)や『アリータ:バトル・エンジェル』(中国1億3300万ドル、米国8600万ドル)が該当する。(文:相良智弘/フリーライター)

相良智弘(さがら・ともひろ)
日経BP社、カルチュア・コンビニエンス・クラブを経て、1997年の創刊時より「日経エンタテインメント!」の映画担当に。2010年からフリー。

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