【映画作りの舞台裏】BLUE LYNX プロデューサーに聞く/前編
かねてから注目されてきているBLだが、ここのところ実写化やアニメ化が行われ、ますます活気付いてきている。2019年春にはフジテレビも参入し、BLに特化したアニメレーベルであるBLUE LYNXを設立!このニュースは業界を駆け巡り、筆者もここまでBLがメジャーになるとは!と驚かされた。
BLUE LYNXでは第1弾作品としてBL好きの間では名作中の名作と名高いヨネダコウ原作の「囀る鳥は羽ばたかない」の劇場アニメ化を発表。その後もフジテレビの深夜アニメ枠「ノイタミナ」でアニメ化されたキヅナツキ原作の「ギヴン」、人気の高い紀伊カンナ原作の「海辺のエトランゼ」と、次々に劇場アニメ化が決定している。そんなBLUE LYNXの立役者である、フジテレビのアニメ開発部のプロデューサー・岡安由夏氏がレーベル設立の意気込みや熱い思いを語ってくれた。
フジテレビでは前述の「ノイタミナ」も15周年を迎え、加えて2018年秋からはさらなる深夜アニメ枠「+Ultra」も始動している。「今アニメはかつてのヲタク趣味というイメージではなく、とても一般的になりました。例えば、今年の作品でいえば(2019年ランキング1位となった)『天気の子』など非常にたくさんの人が見ているし、製作側も広い層に訴求する作品を目指すことが多くなりました」と岡安氏は言う。一方で、「多くの人に見てもらえることはとても良いことです。でも逆に、コアな層が密かに高い熱量で支えるタイプのアニメ作品が少なくなってきたようにも感じていました。“みんなのもの”よりも“私だけが知ってる特別なもの”の方がひとりひとりの熱量は大きいんじゃないかと私は思うんです。そこからそういった方々が熱狂するものを作りたいと思うようになったんです」とも。
さらにフジテレビに入社後、上司が無類のBLファンだったために大量のBLコミックを貸してもらい、浴びるように読んだのだという。“お金になるから”というビジネス的な側面だけで扱われるとBLファンとしては寂しい気がするが、岡安氏自身が好きだというのは嬉しくて心強い。
それこそそういう熱量というものは作品から透けて見えるものでもある。岡安氏自身が好きだからこそ、BLが好きな人にとって誠実な作品作りをしていきたいと語る。コアなファン層に向けたものはそれ相応の姿勢で作らないと受け入れられず、ファンの心を掴むことはできない。
しかしながら、いくら好きでもそれだけでビジネスは動き出さない。岡安氏は振り返る、「『同級生』(中村明日美子原作の同名BLコミックの劇場版アニメ化)が興行として成功したのは大きかったですね。その後、他局ですが『おっさんずラブ』があれほどヒットしましたし、フジテレビでも『ポルノグラファー』が好調で続編の『ポルノグラファー〜インディゴの気分〜』(2作とも丸木戸マキ原作の同名BLコミックのドラマシリーズ化)も制作されて、社内の気運が高まっていました。だからチャレンジさせてもらえたのだと思います」。
また、BLの波が来ていることとは別にもう一つ、岡安氏には大きな勝算があった。BLにはまだまだ良質な原作がたくさんあることだ。1クール中に放送されるアニメは本数が多く、一般漫画やライトノベルで人気の原作はほとんどアニメ化されている。競争の激しい市場=レッドオーシャンに対して、BLは開拓の余地が十分にあるブルーオーシャンだ。その意味も掛けてレーベル名はBLUE LYNXと名付けられた。(中編に続く)
『囀る鳥は羽ばたかないThe clouds gather』(2020年2月15日より公開)公式サイト
https://saezuru.com
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