(…前編「『囀る鳥〜』劇場版を仕掛けた“BLファン”が語る、コアな熱量」より続く)
【映画作りの舞台裏】BLUE LYNX プロデューサーに聞く/中編
岡安氏は“劇場版”であることにもこだわった。それはズバリ、テレビよりも自由な表現ができるからだ。BLには性描写を含めた作品が少なくない。そして、切っても切り離せない心と体を深く描いた作品も多い。そんなBLにとって重要な性描写を、テレビでは十分に表現できないことが多い。だが、映画では描くことができるのだ。テレビだからと原作を変えてマイルドにすることはしたくないという岡安氏は、映画ならではの表現の広さに期待している。
さらに、性描写と切り離せないがゆえに「BLは映像化において未開拓のブルーオーシャンでいつづけられたのだろう」と岡安氏は分析する。「BLは性描写が映像化においては高いハードルとなり、映像化を断念したり避けたりしてあまり手が付いていなかったジャンルだと思います。逆に性描写を描くことにチャレンジすれば、まだ映像化されていない良質な作品を扱うチャンスがたくさんあります。表現の自由度の高い映画なので思いきり描きたいですね。BLをアニメ化することは新しいことではないですが、性描写も含めて原作ときっちり向き合うことで他と差別化をしていきたいです」という発言はBLファンにとってなんとも頼もしい言葉だ。
このほかにも第1弾作品として候補はあったが、岡安氏が第一希望として考えていたのが「囀る鳥は羽ばたかない」だった。何より岡安氏が大好きな作品であり、人気も非常に高い。そして、被虐的で自己矛盾を抱えた矢代の複雑で魅力的なキャラクターを描くにあたって、性描写をどこまで描けるかはポイントとなってくる。まさに映画だからこそチャレンジできる表現で、他作品と差別化をできる原作であると感じたという。「作品として必要であればR18+も辞さないつもりで、そこは日和らずにいこう!とスタッフと話しています!」と意気込む。
制作会社は人気BLコミックをアニメ化した『ヤリチン☆ビッチ部』を手がけたGRIZZLYに打診をしたところ、GRIZZLY内でも『囀る〜』が映像化候補作品として上がっていたそうだ。さらに原作者のヨネダコウ氏にオファーすると、制作会社がGRIZZLYならと快諾を得られ、引き寄せられるようにスムーズに話が運んだ。(後編へ続く…)
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