(…中編「BL特化のアニメレーベルBLUE LYNXプロデューサー『BLは未開拓のブルーオーシャン』」より続く)
【映画作りの舞台裏】BLUE LYNX プロデューサーに聞く/後編
フジテレビがBLに特化したアニメレーベル、BLUE LYNXを設立。その立役者である岡安由夏プロデューサーに話を聞いた。BLUE LINXの第1弾はヨネダコウ原作の大人気BLコミック「囀る鳥は羽ばたかない」の劇場版アニメで2020年2月15日に公開予定だ。
実は『囀る鳥は羽ばたかない』が映像化されると知ったとき、筆者は非常に驚いた。BLで極道モノは珍しくないが、『囀る〜』は唯一無二の世界観を持っており、熱烈なファンの多い別格の作品だからだ。筆者の周囲のBLファンも今回の映画化ニュースを知って驚きを隠せなかった人が少なからずいた。岡安氏は「プレッシャーは感じています。ハードルが高いのは承知の上で、第1弾には待望と言われる作品を持って来たかったんです。みなさんに愛されている作品なので、さらに気を引き締めて制作したいと思っています」と語る。
現時点では、第1弾である『囀る〜』の公開が来年であるにも関わらず、さらなる第2弾、第3弾の作品が発表されている。第2弾は「ノイタミナ」でのテレビシリーズが好評だったキヅナツキ原作「ギヴン」の続編となる『映画 ギヴン』で、2020年春に公開予定。「ギヴン」は青春バンドものでテレビシリーズでは真冬、立夏の高校生組の関係性が描かれたが、映画では春樹、秋彦、雨月の大人組の恋模様が描かれるのだそう。
それにしても、通常なら第1弾がヒットして成功すれば、2弾、3弾……となるが、公開前からすでに先々の作品が決まっていることに驚かされる。『映画 ギヴン』はテレビシリーズの続編であるが、『海辺のエトランゼ』までもとは。それだけ社内でも期待が高い現れだろう。とはいえ『海辺のエトランゼ』は偶然の巡り合わせだったのだとか。「『海辺のエトランゼ』は松竹さんが企画を進められていた作品なんです。偶然、食事会で松竹のご担当の方と、お互いBLが好きだということで盛り上がったことがきっかけでご一緒することになりました」と経緯を説明してくれた岡安氏は「必ずしもフジテレビがメインの企画である必要はないし、むしろその方がバリエーションが広がると思います。それこそがレーベル・BLUE LYNXという“パッケージ”を作った目的の一つでもあります」と柔軟な姿勢を見せる。
「『ノイタミナ』の方法ですが、1作1作バラバラで扱うよりも、複数の作品を1つのパッケージとして推し出していく方が多くの方に興味を持ってもらえるチャンスが増えると思うんです。個々の作品によってターゲット層は違いますが、まとめてラインナップすることで、他の層の方に知ってもらうことができます。『囀る鳥は羽ばたかない』も『ギヴン』も『海辺のエトランゼ』も同じBLというジャンルだけどメイン読者層はそれぞれ微妙に違う。それを1つのパッケージにすることによってそれぞれのファンの方に、これも気になるな、と思ってもらいたい」と「ノイタミナ」で培ったノウハウについて教えてくれた。
2017年に企画をスタートさせたBLUE LYNXのプロジェクトたが、準備を進めていくなかで業界も変化していき、『抱かれたい男1位に脅されています。』や『ヤリチン☆ビッチ部』がアニメ化され、BLアニメの急増に焦りもあると言うが、単発にとどまらない“BLに特化したアニメレーベル”は業界初であり、それを強みに継続的なプロジェクトとして取り組みたいという。
いよいよ来年2月15日に、第1弾『囀る鳥は羽ばたかないThe clouds gather』が公開となる。どんな内容に仕上がっているのか、今から胸が高鳴る。そして劇場版アニメ『囀る〜』が第2章へと続いていくことを期待するのはもちろん、今後はどんな新たな作品がラインナップに加わるのだろうかとワクワクしてしまう。そのときもまた驚かされ、ときめいてしまうに違いない。(文:矢野絢子/ライター)
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