小児性愛者の異常性に震撼 14歳少女をグルーミングする手口のおぞましさとは
彼女の信じた愛は、やがて絶望に変わった——国家を動かした衝撃の告発
50歳の小児性愛作家と14歳の少女の間に起こった“事件”を描き、フランスで若者を中心に異例のヒットを記録した映画『コンセント/同意』。映画批評やSNS上でも「おぞましい」「辛い」「憤りが抑えられない」という声とともに「見るべき重要な作品」「こういった事実があったことをしられてよかった」といった感想も数多く上がっている本作より、一部本編映像とともに監督・原作者のコメントを紹介する。
・50歳の小児性愛作家と14歳の少女が性的関係を結び、歪な関係にのめり込んでいく…フランス中を震撼させた衝撃の実話が映画化
2020年1月、1冊の本が出版されフランス中が騒然となった。「同意」と題されたその著書は、芸術文化勲章まで受賞した有名作家ガブリエル・マツネフと14歳で性的関係を持っていた女性ヴァネッサ・スプリンゴラからの、いわば告発だった。そこに記されていたのは、マツネフが彼女を含む多数の少女たちとの関係を作品の題材として利用した生粋の小児性愛者にも関わらず、その歪んだ行為さえ文学として消費され、礼賛すらされてきたという驚くべき実態である。
その反響は凄まじく、マツネフの著書を出版してきた老舗のガリマール社を始め多くの出版社が彼の書籍の販売を中止、国からマツネフへ支払われていた文学者手当も打ち切りが決定されるなど、文字通り国中を揺るがす事態に発展した。本作はその衝撃の実話をもとに映画化され、公開されるやいなやこちらも大きな話題を呼んだ。特に若者たちの間では「今見るべき、知るべき作品」としてSNSでトレンド入りするなど日に日に観客を増やし、公開2週目から前週を上回る観客数を動員。異例のヒットを記録している。
文学を愛する13歳の少女ヴァネッサは、50歳の有名作家ガブリエル・マツネフと出会う。彼は自身の小児性愛嗜好を隠すことなくスキャンダラスな文学作品に仕立て上げ、既存の道徳や倫理への反逆者として時代の寵児となった著名人だった。やがて14歳になったヴァネッサは、彼と“同意”のうえで性的関係を結び、その歪な関係にのめり込んでゆく。それが彼女の人生に長く暗い影を落とす、忌むべきものになるとも知らず…。
今回紹介する本編映像で映し出されるのは、自分宛てに届いた恋文に胸踊らせる少女の姿だ。手紙に綴られているのは「あなたは特別な人だ」「忘れられない」「私のプリンセス」「昼も夜もあなたを夢見ている」といった甘美な言葉の数々。文学を愛する主人公、13歳の少女ヴァネッサは、自分に向けられたその一見情熱的な内容に頬を赤らめつつも、その表情はどこか誇らしさをたたえている。
それもそのはずで、手紙の主はテレビにも度々出演する時代の寵児、有名作家ガブリエル・マツネフからのものだからだ。しかし、その作家はヴァネッサの36歳年上。彼女はその異常性にはまだ気づいていない。美しく詩的にも見える映像は一見恋の始まりをも予感させるが、これはおぞましい「グルーミング」の始まり。小児性愛者が被害者となる子どもに近づき、懐柔していくための手段に過ぎないのだ。
実話をもとにした本作では、そこから始まる卑劣な小児性愛作家による<捕食>の手口をおぞましいほど克明に映し出してゆく。事実ゆえに何を取捨選択しどう表現するのか、その決断は簡単ではなかったのではないか? その点について監督のヴァネッサ・フィロは次のように語る。「観客がリアルタイムでそのメカニズムを意識し、真実に近づくためにその段階のすべてを映像化する。それが私の方針でした。読書にさほど親しみのない観客にもこの物語を知らしめ、ヴァネッサの心の傷に思いを馳せる機会を提供したい、そう思ったんです」。
それに対して本作の主人公でもある原作者のヴァネッサ・スプリンゴラは、「この映画は間違いなく原作の精神に忠実で、美しく公正かつ上品で複雑な作品に仕上がっています。それゆえに出来上がった映像を初めて見た際はとてもつらい気持ちになりましたが、何度も見返すことで監督は素晴らしい仕事をしてくれたのだと改めて確信できました」と本作の挑戦に敬意を表した。
ただ、未成年者に対する性加害を扱っているため作品のホームページには「ご鑑賞予定の皆様へ」と注意文(https://klockworx.com/news/18995/)が掲載されている。
『コンセント/同意』は全国公開中。
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